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動物 記事まとめ

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浮世絵に描かれた動物たちの記事をまとめました。
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2022年3月の記事一覧

ネズミの絵暦いろいろ

旧暦では、一ヶ月が30日からなる大の月と、29日からなる小の月がありました。毎年変わる大小月を示した暦が「大小」であり、またこれを絵で示したものを近代以降では「絵暦」(大小絵暦)と呼びます。 新年に配られた絵暦では、鶴や亀、十二支などおめでたい動物もモチーフとして人気でした。今回は太田記念美術館が所蔵する絵暦のなかから、安永9年(1779)、庚子の、ネズミが大活躍する絵暦をご紹介いたします。 「鼠の相撲」 12.6×13.1cm ネズミの力士が睨み合っています。行司は大

ネズミVS人間のいさかいをリポートしてみた

今回ご紹介するのは、ネズミと人との小競り合いを描いた四代歌川国政「しん板ねづミのたわむれ」(明治15年[1882]大判錦絵)。では早速、見ていきましょう。 一段目  夜、ネズミの暗躍と翻弄される人々 まずは一段目。夜中に突然ネズミが現れたのでしょう、寝間着姿の夫婦と子供が大騒ぎをしています。 勇ましく応戦する男性。右手に枕、左手にほうきを手にしています。右足で踏みつけるのはネズミ捕りの仕掛け、「枡おとし」に使った一升枡。棒で支えて立て掛けた一升枡の下に餌を置き、これにネ

浮世絵の象たちをご紹介いたします

現代人にとって、動物園やテレビで見慣れた動物である象。浮世絵にもしばしば登場するのですが、本来、象は日本には生息しない動物です。今回は江戸から明治にかけて象を描いた浮世絵をご紹介しながら、当時の人々にとって未知の動物である象が、どのような存在であったかも見ていきたいと思います。 北尾重政「江口の君図」寛政1~10年(1789~98)頃 絹本着色 一幅 白い象に乗るのは、謡曲『江口』で知られる遊女。『江口』は、西行法師が摂津国の江口で遊女と歌問答を行ったことや、遊女が普賢菩

浮世絵のなかに夢中で遊ぶ猫を探してみた

浮世絵には、江戸時代の人々に家族の一員として愛された猫たちが数多く登場します。そこで今回は、夢中で遊ぶ飼い猫たちの姿を中心にご紹介いたします。 月岡雪鼎「髪すき」天明6年(1786) 絹本着色一幅 季節は冬。こたつに入った女性が髪を結ってもらいながら手紙を読んでいます。そしてその手紙の端では・・・ ヒラヒラ揺れるのが面白いのでしょう。赤い紐が結ばれた飼い猫が、手紙の揺れに合わせて踊るようにじゃれついています。ちなみに本図は肉筆画。柔らかな筆使いで猫のフワフワとした体毛が