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天気 記事まとめ

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2020年11月の記事一覧

江戸っ子は雨が降ると、みんな裸足になるのか、調べてみた。

先日のTwitterにて、こちらの歌川広景の「江戸名所道外尽 四十六 本郷御守殿前」を紹介したところ、雨の日はみんな裸足なの?というご質問がいくつかありました。 たしかに雨が降るなか、みんな裸足です。実は、筆者はこれまでまったく気にしていなかったのですが、言われてみれば「なるほど」と思い、早速調べてみました。 たとえば、雨の名作、歌川広重の「江戸名所百景 大はしあたけの夕立」。 左端にいる2人の女性は下駄を履いていますが、 男性たちは裸足になっているようです。(ただし

光の色を描き分けるー歌川広重「名所江戸百景 猿わか町よるの景」

歌川広重が晩年、亡くなるまでの約2年半の間に自らの集大成として精力を傾けたのが「名所江戸百景」である。江戸の名所を切り取った風景画のシリーズで、広重が手掛けた点数は118点にのぼる。 有名作を多く含むが、秋の夜長にじっくり眺めたい名作としては、月の光を見事に描写した「猿わか町よるの景」を選びたい。 場所は猿若町。今の東京都台東区浅草6丁目、浅草寺の北東である。森田座、市村座、中村座という、江戸っ子たちに大人気の娯楽であった歌舞伎を上演する芝居小屋が、一ヶ所に集められた繁華

橋に抱く江戸への郷愁ー小林清親「東京新大橋雨中図」

小林清親は、明治時代のはじめに東京の風景を描いた浮世絵師である。西洋の石版画や写真の表現を取り入れ、江戸時代の浮世絵にはない、光と影の移ろいを捉えた「光線画」と称される木版画を生み出した。その最初期に制作された作品が、この「東京新大橋雨中図」である。 隅田川に架かる新大橋に、雨がしとしとと降り注ぐ。空に広がる雨雲は薄くなりつつあるので、雨はもうすぐおさまるだろう。 川の揺らぎや、水面に反射する橋脚や小舟の影を捉えるのが、清親の光線画らしい特色だ。 蛇の目傘をさしている女