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【オンライン展覧会】「月岡芳年―血と妖艶」第2章 妖艶

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 太田記念美術館にて、2020年8月1日~10月4日に開催された「月岡芳年―血と妖艶」展のアーカイブです。展覧会は「血」「妖艶」「闇」の3章構成となっており、さらに前期と後期で全点展示替えをしておりましたが、このオンライン展覧会では、第2章「妖艶」で展示した全50点の画像、ならびに全ての作品解説を掲載しています。
 note上では、画像をクリックすると、より大きなサイズでご覧いただけますので、美術館で実物をご覧いただくような感じでお楽しみいただけます。
オンライン展覧会の入館料は600円です。無料公開の下にある「記事を購入する」をクリックしてご購入ください。一度記事をご購入されると無期限でご覧いただけます。
 いつでも、どこでも、お好きな時に「月岡芳年ー血と妖艶」展をご鑑賞ください。

はじめに

 月岡芳年は、武者絵や歴史画に比べれば少ないですが、美人画も数多く手掛けています。師匠である歌川国芳からの影響を受け、その作風は、歌川派の系譜に連なる浮世絵らしい美人画からスタートしています。
 しかしながら、明治時代に入っていくと、それまでの浮世絵では伝わりづらかった、女性の内面の感情や性格が強く感じられるようになってきます。それはちょっとした眼元や口元、あるいは指先の動きだったりするのですが、そのような細やかな表現によって、芳年の美人画は、単なる外見的な美しさだけではなく、内面から漂ってくる妖艶な魅力を感じさせるのです。
 晩年の代表作である「風俗三十二相」や「月百姿」を中心に、幕末から明治まで、芳年が描いた妖艶な美人たちの魅力を紹介します。

№1「仮寝乃きぬぎぬ」大判3枚続 万延元年(1860)10月

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『藤岡屋日記』によると、本図の制作の前年、万延元年(1860)9月29日に吉原遊郭は全焼した。題名に「仮寝」とあることから、再建までの仮宅での情景を描いていると考えられている。きぬぎぬとは明け方、客が遊郭を後にするころの時間。客の見送り、二度寝、寝起き、寒そうに歩く様子など、朝方の遊女たちの様子がよく伝わってくる。本図は芳年の画業において初期に制作された作品であり、活発で健康美あふれる遊女たちの描き方に、師匠・国芳からの影響が強く見られる。

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№2「今様けんし 江之島児ヶ渕」大判3枚続 元治元年(1864)5月

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浮世絵において「源氏絵」と言った場合、厳密には柳亭種彦作『偐紫田舎源氏』を題材にした作品のことを指す。本図は江ノ島の稚児ヶ淵にて、鮑を捕る海女たちと、それを見物する主人公の足利光氏を描く。ダイナミックにうねる波をものともせず、生き生きと躍動する海女たちからは、健康的な美があふれる。

002-3 5381 月岡芳年1

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№3「古今比売鑑 薄雲」大判 明治8~9年(1875~76) 個人蔵

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「古今比売鑑(古今姫鑑、古今日女鑑とも)」は、賢女や才女として知られる女性を描いた、9図が知られるシリーズ。美人半身図としては、芳年のはじめての揃物である。本図に描かれるのは、三浦屋お抱えの遊女・薄雲。猫好きとして知られ、猫を抱いているだけではなく、着物の柄や簪までも猫のモチーフがあしらわれている。高級遊女としての品格の高さはそのままに、猫を愛でるやわらかな目つきや緩む口元が、可愛らしい一面を見せる。


№4「美立七曜星 満月」大判 明治11年(1878)12月 個人蔵

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「美立七曜星」とは七曜星(太陽、月、火星、水星、木星、金星)に、明治天皇の典侍たちをなぞらえたシリーズ。満月を見つめる「掌侍正六位 石山輝子」と、和歌を詠もうと短冊を眺める「掌侍正六位 平松好子」を描く。鮮烈な赤が際立つが、これは輸入顔料のアニリンによるもので、安価で発色が良いことから多用されるようになった。本図でも鮮やかな赤の色彩が、宮中の華やかなイメージを表現することに一役買っている。また、芳年は同様の趣向で花を背景とした「美人七曜華」も手掛けている。

なお、女性たちの着物には空摺(エンボス加工)が施されている。

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№5「全盛四季春 荏原郡原村 立春梅園」大判3枚続 明治17年(1884)3月

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「全盛四季」は春、夏(№6)、冬の3図のシリーズで、秋は確認されていない。本図は明治16年(1883)頃に、荏原郡原村(現在の大田区)に作られた梅園が舞台。新名所である梅園で、日本橋菊次、数寄やまち小悦、新橋ふみの3人の人気芸者が遊ぶ様子を描く。纏う着物は無地でシンプルだが、ほころぶ梅たちと調和し、穏やかな春の空気感を表現している。段々と面長で目尻がキュッと上がった、色気のある芳年美人像が形成されてきたことが見て取れる。

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