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【オンライン展覧会】「赤ー色が語る浮世絵の歴史」

 太田記念美術館にて、2022年3月4日~3月27日に開催の「赤ー色が語る浮世絵の歴史」展のオンライン展覧会です。

 画像をクリックすると、より大きなサイズでご覧いただけますので、美術館で実物をご覧いただくような感じでお楽しみいただけます。
 オンライン展覧会の入館料は800円です。無料公開の下にある「記事を購入する」をクリックしてご購入ください。一度記事をご購入されると無期限でご覧いただけます。
 いつでも、どこでも、お好きな時に「赤-色が語る浮世絵の歴史」展をご鑑賞ください。

はじめに

 浮世絵には豊かな色彩があふれています。なかでも「赤」という色は、作品全体を華やかにしたり、画面を引き締めたりする上で、最も重要な色と言えるでしょう。
 赤は、鈴木春信や東洲斎写楽の活躍した18世紀では、淡く柔らかな色でした。歌川広重や歌川国貞が人気を誇った幕末になると、徐々に濃さを増していき、月岡芳年が活躍をした明治時代に入ると、どぎついほどに鮮やかになります。200年以上に渡る浮世絵の歴史の中で、赤はその色合いを少しずつ変化させているのです。
 さらに、赤は「紅絵」、「紅摺絵」、「紅嫌い」、「赤絵」など、浮世絵の制作用語として最も用いられる色でもありました。赤の絵具の使われ方が、浮世絵の技術の発展そのものを語る上で欠かせないのです。
 本展覧会では、鮮やかな赤色が印象的な浮世絵を約60点厳選しました。春信、写楽、広重、芳年といった人気の浮世絵師たちはもちろん、浮世絵の長い歴史の中で活躍したさまざまな絵師たちをまんべんなく集めています。江戸・明治の人々を魅了した赤の美しさに迫るとともに、赤という色を通してこそ見えてくる浮世絵の歴史を紹介します。

1.赤の名品

200年以上に渡る長い浮世絵の歴史で、赤という色の美しさが際立つ名品は数多くあります。まずプロローグとして、18世紀半ばから19世紀末にかけて制作された赤の浮世絵を時代順にご紹介します。鈴木春信や東洲斎写楽、歌川広重、月岡芳年など、時代を代表する人気絵師たちの作品を通して、浮世絵の赤の魅力をご堪能ください。

№1 石川豊信「瀬川吉次の石橋」寛延3年(1750)9月

墨摺の主版(輪郭線)に赤と緑の2色だけを摺った「紅摺絵べにずりえ」。10歳で初舞台を踏む二代目瀬川吉次(のちの二代目瀬川菊之丞)の着物や手にしている獅子頭や房状のもの、背景の牡丹など、赤の鮮やかさが印象的である。石川豊信は鈴木春信が登場する以前、紅摺絵による美人画を数多く制作した。

№2 鈴木春信「浮世美人寄花 南の方 松坂屋内野風」明和5~6年(1768~69)頃

明和2年(1765)頃、10色近い色版を重ねて摺る多色摺の技術が発達し、「錦絵にしきえ」と称されるようになった。その時の錦絵の作画を主に行なったのが鈴木春信である。本図は、南の方、すなわち品川にある妓楼・松坂屋の遊女、野風を描く。遊女やお付きの禿かむろの着物、背景の三つ布団に赤が用いられている。遊郭の三つ布団は位の高い遊女の証。布団の赤さが遊女の華やかさを演出している。

№3 勝川春潮「四代目岩井半四郎の七変化」天明7年(1787)

石橋、座頭、官女、傾城、草刈童、関寺小町、春駒といった七変化の所作事を演じる四代目岩井半四郎。絵師は、役者絵で著名な勝川春章の弟子でありながら、美人画を得意とした勝川春潮である。赤だけでなく、ピンクや紫もそれほど退色することなく残っており、制作された当初の華やかな色を伝える貴重な作品である。

№4 東洲斎写楽「二代目中村野塩の小野小町」寛政6年(1794)11月

歌舞伎役者の大首絵で有名な東洲斎写楽だが、本図は寛政6年(1794)11月・閏11月の顔見世狂言に取材した第3期の作品。細判のサイズに役者の全身像を描いている。東京国立博物館でも同じ作品を所蔵しているが、東博本と比べ、衣装の薄紅色が退色せずに残っている。

№5 溪斎英泉「東都名所尽 司馬増上寺之図」天保後期(1836~44)頃

現在の東京都港区芝公園4丁目にある増上寺。入口の三解脱門は、今でも当時の姿をとどめ、国の重要文化財に指定されている。朱塗りの三門は、濃い赤と薄い赤の2色を用いて表現されている。また、左上の題名の枠内は、それよりも朱色がかった赤となっている。

№6 歌川広重「牡丹に孔雀」天保3年(1832)頃

風景画で知られる歌川広重だが、実は花鳥画の作例も多い。本図は、紅白の牡丹と孔雀を組み合わせたおめでたい画題である。赤い牡丹は、輪郭線をあえて用いない無線摺とすることで、花弁のふんわりとした柔らかさを表現しようとしている。赤を3段階の濃淡に摺り分けているところにも注目してもらいたい。一方、白い牡丹は色を摺らずに空摺で凹凸を付けることで、立体感を生み出そうとしている。

№7 歌川広重「名所江戸百景 蒲田の梅園」安政4年(1857)2月

歌川広重の代表作「名所江戸百景」の一図で、蒲田の梅園を描く。空のほとんどが赤色で摺られているのが印象的である。ここまで空が赤くなっている「名所江戸百景」の作品は、同じく梅園を描いた「亀戸梅屋舗」しかない。白梅の白さを際立たせるため、あるいは、梅の香りが漂う様子を表現しようとしたためであろうか。白梅のつぼみを赤い点で描写しているところにも注目してほしい。

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