【オンライン展覧会】「赤ー色が語る浮世絵の歴史」
太田記念美術館にて、2022年3月4日~3月27日に開催の「赤ー色が語る浮世絵の歴史」展のオンライン展覧会です。
画像をクリックすると、より大きなサイズでご覧いただけますので、美術館で実物をご覧いただくような感じでお楽しみいただけます。
オンライン展覧会の入館料は800円です。無料公開の下にある「記事を購入する」をクリックしてご購入ください。一度記事をご購入されると無期限でご覧いただけます。
いつでも、どこでも、お好きな時に「赤-色が語る浮世絵の歴史」展をご鑑賞ください。
はじめに
1.赤の名品
№1 石川豊信「瀬川吉次の石橋」寛延3年(1750)9月
墨摺の主版(輪郭線)に赤と緑の2色だけを摺った「紅摺絵」。10歳で初舞台を踏む二代目瀬川吉次(のちの二代目瀬川菊之丞)の着物や手にしている獅子頭や房状のもの、背景の牡丹など、赤の鮮やかさが印象的である。石川豊信は鈴木春信が登場する以前、紅摺絵による美人画を数多く制作した。
№2 鈴木春信「浮世美人寄花 南の方 松坂屋内野風」明和5~6年(1768~69)頃
明和2年(1765)頃、10色近い色版を重ねて摺る多色摺の技術が発達し、「錦絵」と称されるようになった。その時の錦絵の作画を主に行なったのが鈴木春信である。本図は、南の方、すなわち品川にある妓楼・松坂屋の遊女、野風を描く。遊女やお付きの禿の着物、背景の三つ布団に赤が用いられている。遊郭の三つ布団は位の高い遊女の証。布団の赤さが遊女の華やかさを演出している。
№3 勝川春潮「四代目岩井半四郎の七変化」天明7年(1787)
石橋、座頭、官女、傾城、草刈童、関寺小町、春駒といった七変化の所作事を演じる四代目岩井半四郎。絵師は、役者絵で著名な勝川春章の弟子でありながら、美人画を得意とした勝川春潮である。赤だけでなく、ピンクや紫もそれほど退色することなく残っており、制作された当初の華やかな色を伝える貴重な作品である。
№4 東洲斎写楽「二代目中村野塩の小野小町」寛政6年(1794)11月
歌舞伎役者の大首絵で有名な東洲斎写楽だが、本図は寛政6年(1794)11月・閏11月の顔見世狂言に取材した第3期の作品。細判のサイズに役者の全身像を描いている。東京国立博物館でも同じ作品を所蔵しているが、東博本と比べ、衣装の薄紅色が退色せずに残っている。
№5 溪斎英泉「東都名所尽 司馬増上寺之図」天保後期(1836~44)頃
現在の東京都港区芝公園4丁目にある増上寺。入口の三解脱門は、今でも当時の姿をとどめ、国の重要文化財に指定されている。朱塗りの三門は、濃い赤と薄い赤の2色を用いて表現されている。また、左上の題名の枠内は、それよりも朱色がかった赤となっている。
№6 歌川広重「牡丹に孔雀」天保3年(1832)頃
風景画で知られる歌川広重だが、実は花鳥画の作例も多い。本図は、紅白の牡丹と孔雀を組み合わせたおめでたい画題である。赤い牡丹は、輪郭線をあえて用いない無線摺とすることで、花弁のふんわりとした柔らかさを表現しようとしている。赤を3段階の濃淡に摺り分けているところにも注目してもらいたい。一方、白い牡丹は色を摺らずに空摺で凹凸を付けることで、立体感を生み出そうとしている。
№7 歌川広重「名所江戸百景 蒲田の梅園」安政4年(1857)2月
歌川広重の代表作「名所江戸百景」の一図で、蒲田の梅園を描く。空のほとんどが赤色で摺られているのが印象的である。ここまで空が赤くなっている「名所江戸百景」の作品は、同じく梅園を描いた「亀戸梅屋舗」しかない。白梅の白さを際立たせるため、あるいは、梅の香りが漂う様子を表現しようとしたためであろうか。白梅のつぼみを赤い点で描写しているところにも注目してほしい。
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