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【オンライン展覧会】「江戸の天気」展 (前期)

江戸の天気チラシ

太田記念美術館にて、2021年6月26日(土)~7月25日(日)開催の「江戸の天気」(前期)のオンライン展覧会です。展覧会は前期と後期で全点展示替えを行いますが、本オンライン展覧会では、前期展示56点の画像と解説を掲載しています。
 note上では、画像をクリックすると、より大きなサイズでご覧いただけますので、美術館で実物をご覧いただくようにお楽しみいただけます。
 オンライン展覧会の入館料は、展覧会と同じ800円です。無料公開の下にある「記事を購入する」をクリックしてご購入ください。一度記事をご購入されると無期限でご覧いただけます。
 いつでも、どこでも、好きな時に「江戸の天気」展をご鑑賞ください。

 なお本記事とは別に、後期のみの作品(57点)をご覧いただけるオンライン展覧会「江戸の天気」(後期)を800円にて、また前期と後期に展示する作品全て(113点)をご覧いただけるオンライン展覧会「江戸の天気」(通期)を1400円にて配信しております。通期の配信は、前期と後期を別々にご購入されるよりも200円お得となっております。内容は共通しておりますので、後期展示にもご興味のある方は、こちらのご購入をお勧めいたします。

展示作品リストはコチラ↓からご覧ください。          http://www.ukiyoe-ota-muse.jp/wp-content/uploads/2021/06/tenki-list.pdf


はじめに

 浮世絵にはさまざまな気象現象が描き込まれています。晴れわたる空、土砂降りの雨、しんしんと降る雪、雨あがりの虹。刻々と変わる天気を、浮世絵師たちは繊細な色彩の変化によって、あるいは大胆にデフォルメし表現してきました。
 日本の、季節によって変化する多様な気候は、今も昔も人々の暮らしにも大きな影響をあたえています。江戸時代には大雨による洪水が度々おこり、また予期せぬ天候不順が飢饉を招くこともありました。科学の発達した現代においても、私達は天候をコントロールすることはできません。天気予報を頼りに日々の気象の変化に備えていますが、近年では大雨や酷暑など異常気象が話題となり、気候変動への関心も高まりつつあります。
 本展では、絵の中の天気に注目し、葛飾北斎や歌川広重、小林清親らの手によって生み出された風景画をご紹介いたします。浮世絵師たちの個性あふれる表現を通して、うつろう空模様を愛でる日本人の美意識はもちろん、時には風雨に翻弄されながらも繰り広げられた人々の営みにも触れていただけることでしょう。

小雨から雷雨まで、雨をテーマとした浮世絵作品はとても多彩です。絵師にとっては形にしづらいさまざまな雨をいかに再現するかは腕の見せどころであり、その観察眼は雨の前後で微妙に変化する空模様へも向けられました。また突然の雨によって日常がドラマチックに変化する様子をとらえ名作の多い、夕立をテーマとした作品にも注目です。

№1 歌川広重「名所江戸百景 高輪うしまち」大判 安政4年(1857)4月

空に虹がかかる雨あがりの情景。雨後のみずみずしい空気のなか、牛車(うしぐるま)の下では愛らしい2匹の子犬が戯れています。牛町(現在の港区)は正式には車町といい、牛車を使った運搬業の人足が多かったことからこの名が付きました。とはいえ画面に人気はなく、先程まで降っていた雨の激しさがうかがわれます。

№3 葛飾北斎「冨嶽三十六景 山下白雨」大判 天保1~4年(1830~33)頃

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わずかに雪が残る富士山の山頂付近は雲ひとつない青空。一方で山麓は真っ黒な雲に覆われ、白雨、すなわち突然のにわか雨に襲われていることが示されています。暗雲を切り裂くのは、極端なまでにデザイン化された稲妻。快晴と雷雨という異なる天気を、富士山というモチーフを通して一つの画面の中で表現した、北斎の卓越した発想力が結実した快作です。

№5 歌川広重 「名所江戸百景 駒形堂吾嬬橋」大判 安政4年(1857)1月

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雨とホトトギスの組み合わせは初夏の景を描く浮世絵で好まれ、駒形とホトトギスの組み合わせは17世紀半ばの遊女、二代目高尾太夫の詠んだ句にちなむもの。また、ぼかしを用いた対岸の明るい空や胡粉の白い線による雨脚は、小雨であることを物語ります。本作の雨空には、江戸のもつ歴史や文化、そして浮世絵の彫摺の高い技巧も盛り込まれていると言えるでしょう。

№10 溪斎英泉「江戸八景 吉原の夜雨」大判 天保14~弘化3年(1843~46)

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画面手前は吉原へと続く日本堤(現・台東区)。斜めに降りつける強い雨にもかかわらず多くの男性が画面左奥の吉原へと向かいます。駆け抜けていく駕籠には雨除けなのでしょう、布がかぶせられています。

№11 歌川国貞「江戸八景 吉原ノ夜雨」大判3枚続 文政4年(1821)頃

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雨の夜、吉原遊廓の一室では、遊女と振袖新造(遊女見習い)が濡れてしまった客の着物を乾かそうとしています。窓辺には傘と足駄(高下駄)が置かれ、画面左の女性は合羽を絞るところ。雨のなか会いに来てくれた客の世話をする遊女は、微笑むような表情です。

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