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今晩は中秋の名月なので、月の浮世絵ベスト3を選んでみた

2020年10月1日(木)は中秋の名月。夜空に輝くお月様を眺めることはできるでしょうか。
さて、浮世絵には月を描いた名品がいくつもあります。今回はその中から、個人的にグッとくる、月の浮世絵ベスト3を選んでみました。(あくまで個人的な独断と偏見によるものです)

①歌川広重「名所江戸百景 猿わか町よるの景」

4484 歌川広重

歌舞伎の芝居小屋が立ち並んだ、猿若町の夜の景色。通りには、芝居小屋から帰る客たちの姿が。薄い藍色のグラデーションで表現された夜空が美しいですね。版木の木目がうっすらと紙に摺られていることも分かります。

4484 歌川広重1

こちらが満月。下の方に、うっすらとした黒い色が横に広がっていますが、汚れではありません。満月にかかる雲が表現されています。他の色とは違い、輪郭線がありませんので、摺師は大体の目安で雲の形をぼかして摺る、「あてなしぼかし」というテクニックを使っています。

目印がないので、全く同じように雲の形を摺るのは困難です。そのため、同じ作品でも、雲の形が微妙に異なっているのです。言われないと気が付きづらいところですが、こういった細かい摺りのテクニックにグッときます。

図1のコピー

また、夜道を歩く人々の足元に影が映っているところもポイントです。満月の輝きを感じさせる、大事な仕掛けとなっています。可愛らしい子犬たちがいるのもお見逃しなく。

4484 歌川広重のコピー1

②歌川国芳「東都名所 新吉原」

1775 歌川国芳1

吉原遊廓へと向かう日本堤の夜景です。先の広重の作品と同様、人々の足元には月に照らされた影が映っています。

1775 歌川国芳2

こちらが満月。月暈(つきがさ、げつうん)と呼ばれる、月の周りに輝いている大きな光の輪が描かれている点が、大注目です。「ハロ現象」とも呼ばれるもので、月の光が、氷の粒で出来た薄雲に反射・屈折して起きている現象です。

ちなみに、月の下の方に、「へ」の字の形のようなものがみえますが、これは作品に開いてしまった虫穴。国芳が意図的に何かを描いているのではありません。

1775 歌川国芳1

右下の方で、おだやかな顔でスヤスヤと眠っている犬たちもお見逃しなく!

③月岡芳年「東名所墨田川梅若之古事」

図12

こちらは、先ほどの広重や国芳の作品とは異なり、悲しい物語の一場面。京都の貴族の子である梅若丸。人買いに連れ去れ、東国への苦しい旅を続けた後、隅田川のほとりで病のために亡くなりました。謡曲「隅田川」で広く知られた伝説です。

この作品は、病にかかった梅若丸を、人買いが見捨てて置き去りにしていく場面。桜吹雪が舞う中、梅若丸が倒れこもうとする様子が描かれています。この時、梅若丸は12歳でした。

074-2のコピー

こちらが満月。雨がパラパラと降り、靄がかかっているためか、月の輪郭線ははっきりせず、ぼんやりとしています。

074-3のコピー

隅田川の水面に反射する月の光。水の動きに合わせて光が揺れ動く様子が、丁寧に描写されています。美しい月の輝き、そして散り行く桜の花が、梅若丸に起きた不幸を、より一層悲しいものにしています。

なお、月岡芳年「東名所墨田川梅若之古事」は、太田記念美術館にて2020年10月4日(日)まで開催の「月岡芳年ー血と妖艶」展にて展示しています。実物をご覧になりたい方はお見逃しなく!

ただし、歌川広重「名所江戸百景 猿わか町よるの景」と歌川国芳の「東都名所 新吉原」は、展示されておりませんので、ご注意ください。

ちなみに、こちらは、太田記念美術館が監修・執筆した書籍『ニッポンの浮世絵』。月を描いた浮世絵をほかにもご紹介しているので、ぜひご覧下さい。

ニッポンの浮世絵_太田記念美術館_見開き-31

文:日野原健司(太田記念美術館主席学芸員)

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原宿にある浮世絵を専門とした美術館です。浮世絵ならびに展覧会に関する情報をお伝えします。画像は表記がないものは太田記念美術館所蔵です。HPは http://www.ukiyoe-ota-muse.jp/、twitterはhttps://twitter.com/ukiyoeota

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