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子ネコたちが寺子屋でお勉強している様子を紹介します
歌川芳虎の「新板ねこの手ならひ師匠」では、子ネコたちが寺子屋で読み書きを習っている様子が描かれています。今回は、そんな子ネコたちの奮闘ぶりをご紹介しましょう。中には真面目にお勉強できない子ネコたちもいるようですが…。
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こちらの浮世絵、画面の上と下に二つの場面が描かれています。まずは、上の「席書」の場面から見てみましょう。
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「席書」とは、大勢の前で子ネコたちに文字を書かせる、言わばお披露目の会です。画面の上には、「鶴亀」「松竹梅」など、大きな紙に書かれた書がずらりとぶら下がっています。
画面の中央、たくさんのネコたちが見守る中、真っ白な着物を着た子ネコが、「錦朝楼」という文字を上手に書いています。「錦朝楼」とは、この浮世絵の作者である歌川芳虎の別号です。
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それを見守るのは女師匠。「さあさあ、上手くお書きよ」と、ちょっとプレッシャーを与えています。
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次に書を書く子ネコも後ろで待っています。「今度はおみけさんの番だよ」と声をかけられていますが、この寺子屋、おみけさんという名前、たくさんいそうです(笑)。
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右上には、男師匠。女師匠と夫婦で寺子屋を経営していると思われます。お披露目の会の開催に、子ネコの姉が「こんにちは。おめでとうございます。」と挨拶に来たようで、師匠も「これは、これは。よくお出でだね」と出迎えています。
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席書では食事もふるまわれるようです。右のネコが「皆さん、たくさんおかわりをなさりまし」と勧め、子ネコたちも礼儀正しく「ありがとうございます」と返事をしています。
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次に、下の場面を見てみましょう。今度は、日常の手習いの様子です。
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上の方に座っているのは師匠。「皆がなまけてはいけません。精出して習いなよ」と、ちょっと厳しめの先生の様です。
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勉強熱心な子ネコたちは、「お師匠さん、お改め」「お読みを教へて下さいまし」「お清書をいたしました」と、自分の書いたものを見せたり、読み方を教えてもらおうとしています。
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他にも真面目に勉強をしている子ネコたちがいます。墨をすりながら、お手本となる折本を広げている子ネコ。
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後ろから手を添えられて、書き方を勉強している子ネコ。お手本には「いろはにほへ」とあるので、まだ書き方を学び始めたばかりなのでしょう。練習用の草紙は何度も使っているので、墨で真っ黒です。
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声を出して読み方を勉強している子ネコもいます。
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一方、真面目に勉強できない子ネコたちもいるようです。こちらの子ネコたちを喧嘩を始めてしまいました。右の子ネコは筆を相手の顔にぶつけ、左の子ネコはお手本の折本を振りかざしています。
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隣の机の子ネコが堪りかねて、「おいおい、そんなに喧嘩をすると叱られるぜ」と注意をしています。
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勉強に飽き飽きしている子ネコたちも。上の子ネコは「もう嫌だ嫌だ」、下の子ネコは「ケツが痒い、痒い」と、長い時間おとなしく座っているのは我慢ができないようです。
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子ネコたちの寺子屋、いかがだったでしょうか。一緒にお勉強してみたいものですね。
こちらの作品は、太田記念美術館の「浮世絵動物園」展にて、前期の2022年7月30日~8月28日に展示しています。
参考文献:市川寛明・石山秀和『図説 江戸の学び』河出書房新社、2006年。
文:日野原健司(太田記念美術館主席学芸員)
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