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【オンライン展覧会】広重おじさん図譜

太田記念美術館にて、2023年2月3日~3月26日(前期:2/3~2/26、後期:3/3~3/26)まで開催しておりました「広重おじさん図譜」展のオンライン展覧会です。前期・後期合わせて全146点の画像および作品解説を掲載しています。
note上では、画像をクリックすると、より大きなサイズでご覧いただけますので、美術館ではなかなかよく見えない細部まで拡大してお楽しみいただけます。
オンライン展覧会の入館料は1500円。無料公開の下にある「記事を購入する」をクリックしてご購入ください。一度記事をご購入されると無期限でご覧いただけます。いつでも、どこでも、好きな時に展覧会をご鑑賞ください。

はじめに

風景画の名作を数多く描いた絵師、歌川広重(1797~1858)。広重の絵をよく見ると、なんとも味わい人物たちがたびたび登場することに気づきます。本展は彼らのことを親しみと愛着をこめて、あえて〈おじさん〉と呼び、その魅力を楽しんでみようという企画です。無垢な笑顔のおじさん、仕事をがんばるおじさん、グルメを楽しむおじさん、ピンチであわてるおじさんなど、広重の描くおじさんたちは見れば見るほど個性豊かで、愛嬌に満ちた存在であることがわかります。
よく知られた広重の名品も、おじさんたちを通して眺めることで、今までとは違った新鮮なイメージで見えてくるかも知れません。保永堂版「東海道五拾三次之内」を始めとした代表作はもちろん、普段展示されることの少ないレアな作品まで、広重の新たな魅力をたっぷりと紹介します。ぜひあなたの推しのおじさんを探してみてください。

※本展は中山道広重美術館で好評を博した「ゆる旅おじさん図譜」および「ゆる旅おじさん図譜リターンズ」展の「広重おじさん」コンセプトを元に、当館の所蔵品を中心に新たに構成した展覧会です。

展覧会チラシデザイン

 

Ⅰいろんなおじさん


歌川広重の風景画などの作品に登場するおじさんたち。よく観察すると、彼らは単なる風景のおまけではなく、さまざまな身分や職業を持ち、それぞれが旅や日常を楽しんでいるように見えてきます。彼らの生き生きとした瞬間を捉えた広重の作品は、どこか現代のスナップ写真を思わせるようです。「笑う」「食べる」「がんばる」「見つめる」など、いくつかのキーワードでおじさんたちの様子を眺めてみましょう。

①笑顔のおじさん

楽しそうに街道を歩いていたり、仕事の合間におしゃべりをしたり・・。広重の作品に登場する、笑ったり、どこか微笑んでいるように見えるおじさんたちを紹介します。

№ 1 歌川広重「 東海道 丗四 五十三次 二川 猿か馬場 」 大判 嘉永4年(1851)

画面の中央に大木があり、その脇を鼻歌でも歌っていそうな、武士と思われる男性が歩いています。のどかな笑顔が印象的です。東海道二川宿の街道の風景で、画面左では茶屋で床几に腰掛けて餅をほおばる人、画面右では駕籠かきとともに、駕籠から降りようとする客の姿も描かれています。題名の書体が隷書体であることから、「隷書東海道」と呼ばれるシリーズの一点。

№ 2 歌川広重 「 東海道五十三次之内 関 旅籠屋見世之図 」 間判 天保14~弘化3年(1843~46)頃

東海道の宿場町、関塾の旅籠屋の店先。今宿に到着したばかりの旅人でしょうか。盥の水に足をひたして道中の汚れを落としているようです。よく見ると旅人は満面の笑顔。左では留女の老女が旅人の着物の袖を引っ張って宿に誘っているようです。題名の書体が行書体であることから、「行書東海道」と呼ばれるシリーズの一点。


№ 3 歌川広重 「 東海道 十五 五十三次 吉原 名所左り不二 」 大判 嘉永4年(1851)頃

二人の女性の旅人と、馬を曳く馬子と荷物持の男性を描きます。よく見ると登場人物は皆笑顔で、楽しい旅のひとときを感じさせます。東海道吉原宿の付近は道が曲がりくねっており、江戸から東海道を歩いた場合、通常右側に見える富士山が左側に見える名所として知られていました。

№ 4 歌川広重 「 木曽海道六拾九次之内 三十三 本山 」 大判 天保7~8年(1836~37)頃

山肌から生えた松の大木が、街道を横切っています。大木の支えの下では、2人の木こりが丸太に座って休憩中の様子。煙草を吸いながら雑談をしているのでしょうか、木こりたちのにこやかな表情が印象に残ります。東海道物の好評を受けて、木曽街道(中山道)を題材にしたシリーズの一点で、本山宿付近を描いています。

№ 5 歌川広重 「 魚売 」 間判 天保前期(1830~35)頃

三人の人物が描かれています。右側は棒手振りの商人で、鰹を手にどうだ、と言わんばかりの表情。真ん中はその鰹を見ておどけた雰囲気で驚く中間(ちゅうげん)、左では大原女と思しき女性が微笑んでいます。遠景には山が見えており、空を飛ぶ時鳥が一羽。何とも意味ありげな図ですが、描かれた場所を含め、詳細は不明です。

№ 6 歌川広重 「 木曽海道六拾九次之内 拾四 高崎 」 大判 天保7~8年(1836~37)頃

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