吉原遊郭までの道のりをご案内いたします。
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吉原遊郭までの道のりをご案内いたします。

吉原遊郭は、浅草寺から北に約1キロのところにありました。現在の東京都台東区千束3~4丁目にあたります。

こちらは江戸時代の地図。左上にある、四角で囲まれている場所が吉原遊郭です。

図1

吉原遊郭の周囲は緑色になっていますが、これは田んぼであることを示しています。吉原遊郭は田んぼに囲まれているという、不便な場所にあったのです。

こちらは二代広重の「東都新吉原一覧」。吉原遊郭をはるか上空から見下ろした作品です。遊郭の周囲が四角く囲まれ、その外には田んぼが広がっていることが分かります。

04【吉原全体】4729-4731二代歌川広重

この吉原遊郭に行くには、どのようなルートを通っていくのでしょうか。さまざまな方向から向かうルートがあるのですが、今回は舟を使う人気のルートをご紹介しましょう。

図5

江戸の中心地から吉原遊郭へ行く場合、まずは猪牙舟(ちょきぶね)に乗って隅田川を北上するのが便利な方法でした。猪牙舟とは、舳先が猪の牙のように細長く尖った、2~3名乗りの小さな舟のこと。

図2

左右に揺れやすいので、乗り心地はよいものではありませんでしたが、スピードが速いのが特徴です。一刻も早く吉原遊郭に行きたいという客にとっては、言わば水上タクシーのような乗り物でした。

猪牙舟で隅田川をさかのぼり、浅草の吾妻橋を通り過ぎて、今戸橋の付近まで到着しますと、客は舟を降りなくてはなりません。吉原遊郭の前には山谷堀という水路が流れているのですが、川幅が狭いため、猪牙舟で行き来することができないのです。

図4

そこで日本堤という堤防に出て、徒歩か駕籠で向かうことになります。今戸橋から吉原遊郭までは約1キロ弱の道のりです。吉原遊郭の入口は北側の大門(おおもん)しかなかったため、どのようなルートでも、この日本堤に最終的には出なくてはなりません。

こちらは歌川広重の「名所江戸百景 よし原日本堤」。日本堤は山谷堀に沿って築かれた堤防ですので、少し小高くなっています。また、吉原遊郭に近づくほど田んぼが広がっていきますので、夜になると周辺は薄暗く、人気のない静かな雰囲気が漂います。

01【日本堤】4494歌川広重

しかし、日本堤の上をアップで見てみると、夜にも関わらず、大勢の歩く人や駕籠に乗る人の姿が。彼らは全員、吉原遊郭へ向かう、あるいは帰ろうとしている客たちでした。ちなみに、通りの両側には茶屋が立ち並んでいます。

01拡大図【日本堤】4494歌川広重

こちらは歌川豊春の「浮絵和国景跡新吉原中ノ町之図」。吉原遊郭の中の様子を描いていますが、遠くの景色に日本堤が見えます。

2524歌川豊春1

アップで見てみましょう。日本堤の周りが田んぼに囲まれていることが分かります。夜なのに、遊郭の客たちが大勢、行き来しています。

2524歌川豊春2

2524歌川豊春3

さて、今戸橋から日本堤を1キロ弱進むと、ようやく吉原遊郭へと近づいてきます。その目印となるのが「見返り柳」です。こちらは歌川広重の「江戸名所之内 新よし原 日本堤 ゑもん坂」。中央に描かれているのが、見返り柳です。

2867歌川広重1

吉原遊郭から帰る客がこの柳のところで後ろ髪をひかれて振り返ることが多かったことから、「見返り柳」と呼ばれるようになりました。この見返り柳のところで左に曲がります。

こちらは最初に紹介した二代広重の「東都新吉原一覧」のうち、左下の遊郭の入り口部分をアップにしました。

05【衣紋坂】4729-4731二代歌川広重06拡大 

下の方が日本堤。見返り柳のところを曲がると、衣紋坂(えもんざか)という緩い下り坂で、その先は五十間道という通りになります。この五十間道は、絵からも分かるように、S字カーブを描いています。そのため、日本堤から吉原遊郭を見ようとしても、建物に隠れてしまい、よく見ることができませんでした。

こちらは歌川広重の「東都名所 新吉原 日本堤衣紋阪晴」。衣紋坂から見返り柳や日本堤を眺めています。

02【衣紋坂】【見返り柳】4038歌川広重

さて、五十間道を通ると、いよいよ吉原遊郭の入口となる大門(おおもん)が近づいてきます。先ほども述べたように、五十間道がカーブを描いているため、大門の前まで行かないと、吉原遊郭の様子はうかがえないのです。

こちらは歌川国貞の「北廓月の夜桜」。日本堤という長い田んぼ道を通って、ようやく目にした大門の先はまるで別世界のにぎわいです。

07【大門】1509歌川国貞大門の全景が分かるように

大門の中には満開の桜と大勢の人々が。夜にも関わらず、煌々とした灯りで照らされています。男性客たちだけでなく、華やかな衣装に身を包んだ花魁の姿も。はたして吉原遊郭の中の世界はどのようになっているのでしょうか。それはまた別の記事でご案内いたします。

文:日野原健司(太田記念美術館主席学芸員)

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