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江戸っ子たちのお花見に参加してみよう

桜が満開の季節。江戸時代の浮世絵には桜の名所が数多く描かれていますが、今回は、花見をしている様子を描いた浮世絵を集めてみました。江戸っ子たちと一緒にヴァーチャルで花見を楽しんでみましょう。

まずは、葛飾北斎の代表作「冨嶽三十六景」の中から「東海道品川御殿山ノ不二」。

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場所は現在のJR品川駅の南。御殿山という小高い丘となっており、たくさんの桜が植えられていました。埋立が進んだ現代とは異なり、目の前には江戸湾が広がっているという、見晴らしの良い場所でもありました。

11225葛飾北斎2

男性たちは坂道を登ってくるところなので、花見を始めるのはこれからでしょうが、扇を広げ、早くも気持ちは盛り上がっているようです。

11225葛飾北斎3

一方、こちらは家族連れのよう。小さな子供たちがそれぞれ両親に背負われていますが、花見の場所にたどり着く前に、すっかり眠くなってしまったようです。朝早く家を出発したからでしょうか。

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こちらは江戸湾を一望できる、見晴らしのいい場所を陣取った男性たち。右下にある包みはまだ開かれていませんが、左端の男性は、すでに盃を傾けています。桜にも海にも興味なく、さっそく一杯というところでしょうか。

お次は、歌川広重の「飛鳥山花見の図」です。飛鳥山はJR王寺駅のすぐそば。現在でも花見の名所として人気のスポットです。

図1

上の絵では見づらいでしょうから、まずはアップをご覧下さい。

2600歌川広重2
2601歌川広重1
2602歌川広重2

揃いの衣装に、揃いの日傘を持った女性たち。大人の女性だけでなく、小さな女の子たちの姿も見えます。

実は、それぞれ同じ流派の三味線音楽を習う女性たちが、一門総出でお花見にやって来たところ。上から、常磐津、長唄の杵屋、清元のグループです。

行列になるほどの大人数で、まるで小学校の遠足のよう。拍子木を持って先導する男性の姿も見えます。

宴会が楽しそうな浮世絵と言えば、こちらの溪斎英泉「江都飛鳥山花看之光景」。場所は広重と同じく飛鳥山です。

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右側の2人、ポーズを取っていますが、歌舞伎役者の舞台の物真似をしているのでしょう。女性は三味線を演奏し、その隣の男性も楽しそうですが、左端の男性はあくびをしています。物真似が退屈なのか、それともお酒を飲み過ぎて眠くなったのか。

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こちらは母親と子どもたちでしょうか。追いかけっこをして遊んでいます。

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桜にまったく目をやることなく、飲み食いに熱心な男性たちも。

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手拭いを頭に巻いて、裸同然で踊っている男性。周りの男性たちはヤンヤヤンヤと手を叩いて盛り上がっています。

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楽しいお花見ですが、盛り上がり過ぎてしまうのも危険です。こちらは歌川広景の「江戸名所道外尽 六 不忍池」。場所は、現在の上野公園の不忍池のほとり。江戸時代も現代も、桜の名所です。

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左から2番目の男性、泥だらけです。おそらく花見で酔っぱらって、泥の中に頭から倒れてしまったのでしょう。顔が一番、真っ黒になっています。後ろにいる宴会仲間とおぼしき男性はちょっと心配そうな表情。一方、通りすがりの女性たちは、クスクスと笑っています。

11951歌川広景1

泥をかぶった男、すっかり意気消沈のようです。左足の草鞋の紐が切れてしまったようで、手に持っています。草履を履いていない左足の足跡だけが、地面にくっきりと。

肩を貸している中の男は、自分の着物が泥で汚れても、やれやれ大丈夫かいといった表情。優しいですね。

11951歌川広景4

花見をする時間が無いという方、せめて浮世絵でお花見気分を楽しんでください。

文:日野原健司(太田記念美術館主席学芸員)


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