![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/48538846/rectangle_large_type_2_f95b8b527d6c0a02540d46329e2d3e91.jpg?width=1200)
江戸っ子たちのお花見に参加してみよう
桜が満開の季節。江戸時代の浮世絵には桜の名所が数多く描かれていますが、今回は、花見をしている様子を描いた浮世絵を集めてみました。江戸っ子たちと一緒にヴァーチャルで花見を楽しんでみましょう。
まずは、葛飾北斎の代表作「冨嶽三十六景」の中から「東海道品川御殿山ノ不二」。
![11225葛飾北斎1](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/48533642/picture_pc_94c26d6d0bcd96d171b8873dd318c80e.jpg?width=1200)
場所は現在のJR品川駅の南。御殿山という小高い丘となっており、たくさんの桜が植えられていました。埋立が進んだ現代とは異なり、目の前には江戸湾が広がっているという、見晴らしの良い場所でもありました。
![11225葛飾北斎2](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/48533879/picture_pc_a274c68d51f61e268ea1e7119b979d6e.jpg?width=1200)
男性たちは坂道を登ってくるところなので、花見を始めるのはこれからでしょうが、扇を広げ、早くも気持ちは盛り上がっているようです。
![11225葛飾北斎3](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/48534008/picture_pc_fba9a05259813de94f7bad5fa597ea7d.jpg?width=1200)
一方、こちらは家族連れのよう。小さな子供たちがそれぞれ両親に背負われていますが、花見の場所にたどり着く前に、すっかり眠くなってしまったようです。朝早く家を出発したからでしょうか。
![11225葛飾北斎4](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/48534263/picture_pc_43da321385eb88ece11b9164349c01d9.jpg?width=1200)
こちらは江戸湾を一望できる、見晴らしのいい場所を陣取った男性たち。右下にある包みはまだ開かれていませんが、左端の男性は、すでに盃を傾けています。桜にも海にも興味なく、さっそく一杯というところでしょうか。
お次は、歌川広重の「飛鳥山花見の図」です。飛鳥山はJR王寺駅のすぐそば。現在でも花見の名所として人気のスポットです。
![図1](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/48534599/picture_pc_d8cdf2676cc4f288b1494c5b8d3877a2.jpg?width=1200)
上の絵では見づらいでしょうから、まずはアップをご覧下さい。
![2600歌川広重2](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/48534729/picture_pc_8362ed39dfb15f652ce45b01d32fddb5.jpg?width=1200)
![2601歌川広重1](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/48534778/picture_pc_54325c8c122917c7fb2d94e9930a1e7a.jpg?width=1200)
![2602歌川広重2](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/48534823/picture_pc_acdfc441408515dca6232437fc198f09.jpg?width=1200)
揃いの衣装に、揃いの日傘を持った女性たち。大人の女性だけでなく、小さな女の子たちの姿も見えます。
実は、それぞれ同じ流派の三味線音楽を習う女性たちが、一門総出でお花見にやって来たところ。上から、常磐津、長唄の杵屋、清元のグループです。
行列になるほどの大人数で、まるで小学校の遠足のよう。拍子木を持って先導する男性の姿も見えます。
宴会が楽しそうな浮世絵と言えば、こちらの溪斎英泉「江都飛鳥山花看之光景」。場所は広重と同じく飛鳥山です。
![画像9](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/48535813/picture_pc_2507ea4aef694fdab371f5f9731a06ed.jpg?width=1200)
右側の2人、ポーズを取っていますが、歌舞伎役者の舞台の物真似をしているのでしょう。女性は三味線を演奏し、その隣の男性も楽しそうですが、左端の男性はあくびをしています。物真似が退屈なのか、それともお酒を飲み過ぎて眠くなったのか。
![画像10](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/48536799/picture_pc_2cdb6e5ae86cd05c42a53c04f3c34e98.jpg?width=1200)
こちらは母親と子どもたちでしょうか。追いかけっこをして遊んでいます。
![画像11](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/48536814/picture_pc_062d38d312506f06c2f1d2dde3887d6d.jpg?width=1200)
桜にまったく目をやることなく、飲み食いに熱心な男性たちも。
![画像12](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/48536829/picture_pc_8f0d035409d21e94d79b0f8c6b460325.jpg?width=1200)
手拭いを頭に巻いて、裸同然で踊っている男性。周りの男性たちはヤンヤヤンヤと手を叩いて盛り上がっています。
![画像13](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/48536851/picture_pc_98a278c8f0f5df6d18aee28f386af2d8.jpg?width=1200)
楽しいお花見ですが、盛り上がり過ぎてしまうのも危険です。こちらは歌川広景の「江戸名所道外尽 六 不忍池」。場所は、現在の上野公園の不忍池のほとり。江戸時代も現代も、桜の名所です。
![11951歌川広景](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/48536891/picture_pc_f86b99f884a29aeb68d430487a560b7a.jpg?width=1200)
左から2番目の男性、泥だらけです。おそらく花見で酔っぱらって、泥の中に頭から倒れてしまったのでしょう。顔が一番、真っ黒になっています。後ろにいる宴会仲間とおぼしき男性はちょっと心配そうな表情。一方、通りすがりの女性たちは、クスクスと笑っています。
![11951歌川広景1](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/48536898/picture_pc_a72bf3c914dc2ebc642bf760f39d00aa.jpg?width=1200)
泥をかぶった男、すっかり意気消沈のようです。左足の草鞋の紐が切れてしまったようで、手に持っています。草履を履いていない左足の足跡だけが、地面にくっきりと。
肩を貸している中の男は、自分の着物が泥で汚れても、やれやれ大丈夫かいといった表情。優しいですね。
![11951歌川広景4](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/48538682/picture_pc_e2845887ebe53d7f3447a043c2b3b2be.jpg?width=1200)
花見をする時間が無いという方、せめて浮世絵でお花見気分を楽しんでください。
文:日野原健司(太田記念美術館主席学芸員)
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