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花魁たちは髪にかんざしをどこまで挿すことができるのか、数えてみた。

花魁といえば豪華絢爛なファッション。なかでも目を惹くのが、簪(かんざし)・笄(こうがい)・櫛(くし)といった髪飾りです。一般の女性たちであれば、控えめに数本挿す程度ですが、花魁たちはこれでもかというくらいド派手に盛り付けます。

それでは、花魁たちはどれくらいたくさんのヘア・アクセサリーを挿しているのでしょうか?6人の浮世絵師たちが描いた美人画の中から、華やかな花魁たちをピックアップしてみました。

トップバッターは喜多川歌麿の「五人美人愛敬競 松葉屋喜瀬川」。寛政7~8年(1795~96)頃の制作です。

28 喜多川歌麿1

松葉屋という遊廓の花魁である喜瀬川。簪は、前髪に6本、後ろ髪に2本と、合計8本。笄は1本に、櫛は1枚です。

ちなみに笄とは、髷に横に挿す、細長い棒状の髪飾りのことです。

図1

徐々に時代を下っていきます。2番目は菊川英山の「青楼名君花合 丁字屋内 丁山 錦戸」。文化5年(1808)の制作です。

136菊川英山1

上と下、どちらが丁山でどちらが錦戸か分かりませんが、上の方の花魁のヘア・アクセサリーを数えてみましょう。簪は、おでこのところに小さなのが2本、さらに前髪には7本、後ろ髪に2本と、合計11本。笄は1本に、櫛は1枚です。歌麿よりも簪が3本増えました。

3番目は溪斎英泉の「浮世四十八手 うわきにまよわせる手」。文政4~5年(1821~22)頃の制作です。

258溪斎英泉1

名前は分かりませんが、上の方の花魁を見てみましょう。簪は前髪に6本、後ろ髪に8本と合計14本。笄は1本に、櫛は2枚です。後ろ髪に挿す簪が一気に増えました。花びらの飾りも付いてちょっと派手になっています。また、櫛も2枚挿すようになりました。

4番目は歌川国貞の「当世美人合 おゐらん」です。文政12年(1829)頃の制作です。

1402 歌川国貞1

簪は、おでこのところに小さいのが2本、前髪に4本、後ろ髪に6本と、合計12本。笄は1本、櫛は2枚です。簪の数こそ、先ほどの英泉より少ないですが、前髪の簪にも花びらの飾りが付き、さらにその形も大きくなって、派手さを増しています。

1402 歌川国貞のコピー2

5番目は月岡芳年の「風俗三十二相 しなやかさう 天保年間傾城之風俗」。明治21年(1888)の制作です。ただし、江戸時代の天保年間(1830~44)の花魁という設定で描かれています。

5410月岡芳年1

簪はおでこのところに小さいのが2本、前髪に6本、後ろの方に9本と、合計17本。笄は1本、櫛は2本です。簪の数は、英泉の14本をさらに上回りました。後頭部に小さめの簪を3本、上から挿すようになったのが要因のようです。

5410月岡芳年3

最後は豊原国周の「見立昼夜廿四時之内 午後六時」。明治23年(1890)の制作です。

1643豊原国周1

簪はおでこに2本、前髪に6本、後ろ髪に12本と、合計20本。笄は1本に、櫛は2枚です。先ほどの芳年をさらに上回り、今回紹介した作品の中では、一番の簪の数となりました。金属製の細い簪を何本も挿しているのがポイントです。珊瑚型の飾りもあります。

1643豊原国周のコピー

以上、花魁たちのヘア・アクセサリーを紹介しました。

文:日野原健司(太田記念美術館主席学芸員)

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