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【オンライン展覧会】「河鍋暁斎ー躍動する絵本」(通期)

 太田記念美術館にて、2021年10月29日~12月19日に開催の「河鍋暁斎ー躍動する絵本」展のオンライン展覧会です。

 note上では、画像をクリックすると、より大きなサイズでご覧いただけますので、美術館で実物をご覧いただくような感じでお楽しみいただけます。
オンライン展覧会の入館料は1400円です。無料公開の下にある「記事を購入する」をクリックしてご購入ください。一度記事をご購入されると無期限でご覧いただけます。
 いつでも、どこでも、お好きな時に「河鍋暁斎ー躍動する絵本」展をご鑑賞ください。

※2021年11月25日、後期展示作品の解説を追記しました。

展示作品リストは下をクリックしてください。

はじめに

 河鍋暁斎(1831~1889)は、幕末から明治にかけて、狩野派でありながら浮世絵も数多く描いた絵師です。近年特に注目を集めており、全国各地の美術館で暁斎の展覧会が開催され、さまざまな肉筆画や版画が紹介されています。しかしながら、暁斎の絵を一冊の本にまとめて出版した「絵本」というジャンルについては、これまでその一部しか触れられておらず、ほとんど注目を集めてきませんでした。

 本展では、『暁斎漫画』や『暁斎鈍画』、『暁斎酔画』など、暁斎の代表的な絵本を取り上げ、「人間と骸骨」「動物と自然」「妖怪と神仏」という3つのコーナーに分類して紹介します。展示する絵本の頁数は420頁を超えており、躍動感あふれる筆づかいと尽きることのないイマジネーションに圧倒されることは間違いないでしょう。いまだ知られざる暁斎のさらなる魅力をぜひご堪能ください。

Ⅰ.人間と骸骨

 暁斎の絵本は、一般的な浮世絵版画と比べると小さなサイズです。しかし暁斎は、その小さな画面に大勢の人々の姿をこれでもかと詰め込みました。祭りや儀式、あるいは、働いたりくつろいだりする場面、さらには、ただ踊っているだけのものもありますが、その姿はいずれもユーモラスで楽しそうです。骨だけの骸骨も暁斎は好んで描いていますが、こちらも生きている人間以上に元気溌溂に動いています。

№1-1 河鍋暁斎『暁斎漫画』 明治14年(1881) ※前期

№1-2 河鍋暁斎『暁斎漫画』 明治14年(1881) ※前期

№1-1は正面から見た骸骨、№1-2は背中から見た骸骨を画面いっぱいに大きく描く。その後ろには、踊ったり、伸びをしたり、さらには二人組でアクロバティックな動きをしたりする骸骨たちもいる。正確に骨格を描写している一方、その動きは躍動感があってどことなくユーモラス。表情も豊かに感じられ、にぎやかな笑い声が聞こえてきそうである。

№2-1 河鍋暁斎『暁斎漫画』 明治14年(1881) ※後期

骨だけになった骸骨たちが生き生きと動いている。左上は歌舞伎の真似。右上は骨だけの傘を持って綱渡り。中央は大喧嘩。仲裁に入る骸骨たちも一苦労である。下は書画会。紙はボロボロ。煙草を吸うと目の穴から煙が出るようだ。

№2-2 河鍋暁斎『暁斎漫画』 明治14年(1881) ※後期

左上は相撲。負けた骸骨は木っ端微塵になっている。右上は説教だが、聴衆は退屈そう。中央は楽器を演奏。下は宴会。紙の貼られていない骨だけの扇を手足に持って踊る骸骨もいる。

№3-1 瓜生政和著・河鍋暁斎画『暁斎画談 内篇』巻之上 明治20年(1887) ※前期

「手足真図及ヒ画図」。手足の形を、本物そっくりに描こうとした「真図」と、絵にするためにややデフォルメした「画図」とに描き分けている。

№3-2 瓜生政和著・河鍋暁斎画『暁斎画談 内篇』巻之上 明治20年(1887) ※前期

右上に「西洋画摸」と記されているように、西洋の美術解剖書を模写したもの。頭蓋骨の構造やそれが人間の皮膚や眼とどのように重なるかを丹念に描いている。

№4 瓜生政和著・河鍋暁斎画『暁斎画談 内篇』巻之上 明治20年(1887) ※後期

西洋の美術解剖書を模写したもの。右は、古代ギリシアの石像であるラオコーン像の筋肉の動きを図解している。左は子どもの骨格を図解したもの。暁斎はいずれも原典を忠実に模写している。

№5 瓜生政和著・河鍋暁斎画『暁斎画談 内篇』巻之上 明治20年(1887) ※前期

№3-2、№4と同様、西洋の美術解剖書を模写したもの。裸体の男性図と骨格図を並べることで、人間の体の構造を理解しようとしている。写生を好んだ暁斎。日本の伝統的な絵画だけでなく、西洋の絵画技法も積極的に取り入れようとする姿勢が見て取れる。

№6 瓜生政和著・河鍋暁斎画『暁斎画談 内篇』巻之上 明治20年(1887) ※後期

西洋の美術解剖書を忠実に模写したもの。裸体の男性図と骨格図を並べることで、人体の構造を説明しようとしている。左下には「門人英国人セーイ・コンテール氏本国ヨリ油画ヲ予ニ贈レリ。其骨格我邦写生人物ノ同意ニ付茲(ここ)ニ出ス」と記されている。コンテール氏はジョサイア・コンドルのこと。

№7-1 瓜生政和著・河鍋暁斎画『暁斎画談 内篇』巻之上 明治20年(1887) ※前期

№7-2 瓜生政和著・河鍋暁斎画『暁斎画談 内篇』巻之上 明治20年(1887) ※前期

「着服図法」と題し、墨色で男性たちの肉体を、朱色で彼らがまとう衣服を描写している。暁斎の絵本には踊るような動きをする人物が数多く登場するが、いずれも破綻なく仕上げられている。この絵のように、衣服の中の肉体の動きをしっかりと思い浮かべていたからであろう。

№8 河鍋暁斎『暁斎漫画』 明治14年(1881) ※前期

『水滸伝』に登場する梁山泊の豪傑の一人である花和尚かおしょう魯智深ろちしん。酒を呑んで酔っ払った魯智深が、寺の山門に置かれた金剛力士像に喧嘩を売り、像を倒してしまうという有名な場面。魯智深が金剛力士像を担ぎ上げるポーズを見開きとした、迫力のある描写となっている。魯智深の隆々とした筋肉の描写と、木造で作られた金剛力士像の体や裳の描写の対比も注目である。

№9 河鍋暁斎 『狂斎画譜』 万延元年(1860)明治摺 ※前期

何かを見て驚き、ひっくり返っている盗賊たち。野良犬たちも吠えたてている。実はページをめくると、№113の巨大な仁王が登場する。狂句は「犬と化す小麿あやしの身振散」「落武者はびっくり村の初幟」。

№10-1 河鍋暁斎『暁斎酔画』二編 明治16年(1883) ※前期

達磨が蘆の葉に乗って揚子江を渡る「蘆葉ろよう達磨だるま」という伝統的な画題だが、本来の男性の姿ではなく、女性の姿で描いている。

№10-2 河鍋暁斎『暁斎酔画』二編 明治16年(1883) ※前期

中国の人物たち。左は鉄拐てっかい仙人。自らの魂を遠くに飛ばす術を使うが、ここでは人の姿となった魂を握り、じっと見つめている。右頁右は蝦蟇がま仙人。青蛙神せいあじんという三本足のヒキガエルを従える。

№10-3 河鍋暁斎『暁斎酔画』二編 明治16年(1883) ※前期

中国の人物たち。馬を入れることができる瓢箪を持つとされる張果老《ちょうかろう》、石を羊に変える黄初平らがいる。

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