【オンライン展覧会】「和装男子ー江戸の粋と色気」展
太田記念美術館にて、2021年1月6日~28日に開催の「和装男子ー江戸の粋と色気」展のオンライン展覧会です。展示作品全67点の画像および作品解説を掲載しています。
note上では、画像をクリックすると、より大きなサイズでご覧いただけますので、美術館で実物をご覧いただくようにお楽しみいただけます。
オンライン展覧会の入館料は、実際の展覧会と同じ800円です。無料公開の下にある「記事を購入する」をクリックしてご購入ください。一度記事をご購入されると無期限でご覧いただけます。いつでも、どこでも、好きな時に「和装男子ー江戸の粋と色気」展をご鑑賞ください。
(※2021年1月28日、追加コンテンツとして、コラム①とコラム②を加えました。)
展示作品リストはこちら↓
http://www.ukiyoe-ota-muse.jp/wp-content/uploads/2021/01/wasou-list.pdf
はじめに
華やかに着飾る若者、渋い柄をスタイリッシュに着こなす大人の男性、奇抜なデザインを好むアウトロー。浮世絵にはこうしたお洒落な男性が次々に登場します。江戸時代、現代同様に男性もファッションを楽しんでいたのです。歌舞伎役者は江戸随一のファッションリーダーでしたし、日々の生活でも男性たちは着物だけでなく頭巾や煙草入れなどの小物、髪型にもこだわりを発揮していました。そしてその洗練された和装姿には独特の色気が漂い、江戸の男性像の大きな魅力となっています。
なお、描かれた男性像の変遷をたどると、江戸前期から中期頃までは前髪を残した若衆が目立つのに対し、江戸後期には勇み肌の男性が好んで描かれるようになるのがうかがわれます。
男性の和装に焦点をあてる本展では、和装男子の魅力を堪能するとともに、江戸の豊かな服飾文化、さらには時代とともに変化する理想の男性像にも触れてみてください。
Ⅰ 主役は和装男子ー名手たちの競演
歌舞伎や遊里、市井の風俗を題材に発展してきた浮世絵にとって、男性を魅力的に描くこともまた、その草創期から重要な課題でした。本章では、奥村政信や鈴木春信、歌川国芳や歌川国貞(三代豊国)といった、江戸時代前期から幕末にいたる、時代を代表する絵師たちの作品を紹介いたします。時代によって異なる男性美だけでなく、一流絵師の筆の冴えも見どころです。
№1 奥村政信「佐野川市松の人形遣い」絹本1幅 寛保~宝暦6年(1741~1756)頃
初代佐野川市松(さのがわいちまつ)は、上方と江戸で活躍した若衆形、女形役者。寛保元年(1741)に江戸に下り「高野心中」での小姓粂之助役で人気を博し、この時衣装に用いた石畳模様が「市松模様」の名で流行した。本図でも羽織や帯に市松模様が表される。市松は容姿に優れ浮世絵の題材としても好まれたが、本図の奥村政信による冴え冴えとした美貌の描写も見どころである。
№2 鈴木春信「つれびき」中判錦絵 明和4年(1767)頃
三味線を演奏する男女は玄宗皇帝と楊貴妃の見立て。春信の描く男女は共に華奢で繊細で、浮世離れした2人が織りなす親密な空間はどこか幻想的である。男性がまとう単衣(ひとえ)の、縦縞が柔らかく湾曲する様が、画面に優美さを添えている。
№3 勝川春潮「橋上の行交」大判錦絵 天明~寛政(1781~1801)頃
女性たちの視線を集める男性。そのファッションは黒い縞の小袖に紫の縞の羽織を合わせ、帯と鼻緒の赤を差し色として効かるというもの。黒い頭巾をマフラーのように首に巻くのも当時の流行であった。江戸中期以降、縞をはじめとする渋いデザインが人気となったが、本図の地味な柄をセンス良く重ねるお洒落上級者の着こなしは、当時の洗練された美意識を伝えている。なお頭に挿しているのは、新年最初の卯の日に亀戸天神境内にある妙義社で授けられた、雷除けのお守り。
№4 歌川豊広「観桜酒宴図」絹本1幅 享和(1801~1804)頃
吉原の引手茶屋の2階から、桜を眺めての遊興の様子。宴の主役と思しき中央の男性は、落ち着いた青のよろけ縞の小袖に、白と茶の市松模様の帯を結ぶ、小物で変化を付ける着こなしである。人物の表情を描き分け、器物の文様も丁寧に描きこむ本作は、肉筆画における豊広の技量の高さをうかがわせる優品。
№5 歌川豊国「愛宕山夏景色」大判錦絵3枚続 寛政2~4年(1790~1792)頃
愛宕神社は眺望の良い愛宕山にあったこともあり、多くの参拝客が訪れた。中央の若い男性が着るのは涼しげな井桁模様の黒絣。この頃の浮世絵に男女とも着用する姿がしばしば見られ、流行したと考えられる。前掛け姿の女性は茶店の娘。左右にはそれぞれ良家の子女と思しき女性たちが描かれ華やかな画面となっている。
№6 歌川国芳「小紫 白柄十右エ門」大判錦絵 弘化4年(1847)
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