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#日本美術

浮世絵で初日の出を拝もう

お正月の朝、早起きして初日の出を拝もうという気持ちはあっても、実際にはなかなか布団から起き上がれないものですよね。そんな時のために、浮世絵に描かれた初日の出をご用意しました。 まずは歌川広重の「江戸名所 洲崎はつ日の出」。辺り一面は雪景色。昨晩は雪が降ったのでしょうか。しかし元旦の早朝にはすっかり晴れたようで、ご覧のように、初日の出がきれいに見えます。 女性たちも頭巾を巻いて、防寒対策をしっかりとしながら、初日の出がよく見える波打ち際へと向かっています。 この場所は洲崎

浮世絵の虹は7色かどうか数えてみた

虹の色の数を聞かれたら、赤・橙・黃・緑・青・藍・紫の7色であると答える人は多いでしょう。しかし、日本以外の国の人に聞いてみると、例えばアメリカやイギリスであれば6色、ドイツであれば5色といったように、国や民族によって頭に思い浮かぶ虹の色の数は異なるそうです。 では、江戸時代の人たちにとって虹はどのように見えていたのでしょうか。浮世絵には、それほど数は多くありませんが、ときどき虹が描かれています。浮世絵に描かれた虹の色を数えてみることにしましょう。 ①歌川国芳「東都名所 す

雨の浮世絵ベスト4を選んでみた

浮世絵には、雨の景色を描いた名作が数多くあります。そこで、雨の浮世絵ベスト4を個人的な好みで選んでみました。今回は、1人の浮世絵師につき、1点の作品に限定しています。 ①歌川広重「名所江戸百景 大はしあたけの夕立」歌川広重には雨を描いた傑作が数多くあります。「東海道五拾三次之内 庄野 白雨」や「近江八景之内 唐崎夜雨」など、一つに絞るのはとても難しいのですが、やはりここは大定番の傑作を選びました。 言わずと知れた、広重の最晩年の「名所江戸百景」を代表する1点です。隅田川に

突然の大雨や雷に戸惑う浮世絵を集めてみた

朝は晴れていたのに、午後になると天気が急変して突然の雷雨に…ということは、誰しも経験したことがあるかと思います。特に傘を持たずに外に出ていた時は困ったものです。 急な大雨を描いた浮世絵といえば、歌川広重の「東海道五拾三次之内 庄野 白雨」ですとか、 同じく歌川広重の「名所江戸百景 大はしあたけの夕立」が有名です。 このように浮世絵には、大雨や雷、あるいは、急激な天気の変化に慌てる人々の姿がしばしば描かれています。今回は、そんな中から3点の浮世絵をご紹介しましょう。 ま

江戸っ子は雨が降ると、みんな裸足になるのか、調べてみた。

先日のTwitterにて、こちらの歌川広景の「江戸名所道外尽 四十六 本郷御守殿前」を紹介したところ、雨の日はみんな裸足なの?というご質問がいくつかありました。 たしかに雨が降るなか、みんな裸足です。実は、筆者はこれまでまったく気にしていなかったのですが、言われてみれば「なるほど」と思い、早速調べてみました。 たとえば、雨の名作、歌川広重の「江戸名所百景 大はしあたけの夕立」。 左端にいる2人の女性は下駄を履いていますが、 男性たちは裸足になっているようです。(ただし

今晩は満月なので、月の浮世絵ベスト3を選んでみた

今晩は名月。夜空に輝くお月様を眺めることはできるでしょうか。さて、浮世絵には月を描いた名品がいくつもあります。今回はその中から、個人的にグッとくる、月の浮世絵ベスト3を選んでみました。(あくまで個人的な独断と偏見によるものです) ①歌川広重「名所江戸百景 猿わか町よるの景」 歌舞伎の芝居小屋が立ち並んだ、猿若町の夜の景色。通りには、芝居小屋から帰る客たちの姿が。薄い藍色のグラデーションで表現された夜空が美しいですね。版木の木目がうっすらと紙に摺られていることも分かります。

光の色を描き分けるー歌川広重「名所江戸百景 猿わか町よるの景」

歌川広重が晩年、亡くなるまでの約2年半の間に自らの集大成として精力を傾けたのが「名所江戸百景」である。江戸の名所を切り取った風景画のシリーズで、広重が手掛けた点数は118点にのぼる。 有名作を多く含むが、秋の夜長にじっくり眺めたい名作としては、月の光を見事に描写した「猿わか町よるの景」を選びたい。 場所は猿若町。今の東京都台東区浅草6丁目、浅草寺の北東である。森田座、市村座、中村座という、江戸っ子たちに大人気の娯楽であった歌舞伎を上演する芝居小屋が、一ヶ所に集められた繁華

広重の雪の浮世絵、ベスト4を選んでみた

雪景色を描くのがもっとも上手い浮世絵師は誰かかと問われれば、やはり歌川広重が筆頭にあげられるでしょう。しかも、ただ単に雪景色をたくさん描いているだけでなく、その構図は作品によってさまざまに工夫が凝らされています。そこで、広重の雪の浮世絵から、傑作の4点を筆者の個人的な好みで選んでみました。あなたはどの雪景色が一番好きですか? ※記事の最後に人気投票結果があります。かなりの接戦になっていますので、ぜひご覧ください。 ①歌川広重「東海道五拾三次之内 蒲原 夜之雪」まずは広重の

江戸時代の雪だるまは「だるま」だったというお話

皆さんは雪だるまと聞いて、どのような形を思い浮かべますか?丸い雪玉を2段重ねて、頭にバケツ、鼻にはニンジン、手袋をさした木の枝の腕といった姿が連想されるのではないでしょうか? 江戸時代も雪が降ると、雪だるまを作ることがありました。ただ、現在の私たちが想像する雪だるまとは、ちょっと形が異なっているようです。 こちらが江戸時代の雪だるま。歌川広景「江戸名所道戯尽 廿二 御蔵前の雪」という浮世絵です。安政6年(1859)の作。 文字通り、だるまの形をしています。だるまとは、禅

江戸時代のイヌが雪の中を駆けまわっているのか、確かめてみた。

童謡「雪」では、雪が降ると「♬犬は喜び、庭駆けまわり~、猫はこたつで丸くなる~」というフレーズがあります。以前の記事では、こたつで丸くなっている江戸時代のネコたちを紹介しました。 それでは、江戸時代の犬たちは雪が降ると喜んで庭を駆け回るのでしょうか?今回は、歌川広重が描いた浮世絵の中から、雪の中の犬たちの様子をご紹介します。 まずは「名所江戸八景 浅草の暮雪」という作品です。雪が降り積もる中、傘をさしながら隅田川のほとりを歩く3人の女性たち。背景には吾妻橋や浅草寺が見えま

橋に抱く江戸への郷愁ー小林清親「東京新大橋雨中図」

小林清親は、明治時代のはじめに東京の風景を描いた浮世絵師である。西洋の石版画や写真の表現を取り入れ、江戸時代の浮世絵にはない、光と影の移ろいを捉えた「光線画」と称される木版画を生み出した。その最初期に制作された作品が、この「東京新大橋雨中図」である。 隅田川に架かる新大橋に、雨がしとしとと降り注ぐ。空に広がる雨雲は薄くなりつつあるので、雨はもうすぐおさまるだろう。 川の揺らぎや、水面に反射する橋脚や小舟の影を捉えるのが、清親の光線画らしい特色だ。 蛇の目傘をさしている女