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月岡芳年 記事まとめ

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月岡芳年が描いた浮世絵が登場する記事をまとめました。
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#美術館

月岡芳年の猫がカワイイという話

猫の絵をたくさん描いている浮世絵師といえば、歌川国芳が有名でしょう。猫が大好きで、たくさんの猫を飼っているだけでなく、仕事をしている最中でも懐に猫を入れていたといいます。 こちらは幼い頃に国芳に入門していた河鍋暁斎が、当時のことを思い出して描いた『暁斎画談』の1図です。右側にいる絵筆を持った人物が国芳。机の周りに猫が何匹もいるだけでなく、懐の中や机の上にもいた様子がよく分かります。 さて、猫好きの歌川国芳の門人であったのが月岡芳年です。芳年と言えば、残酷な血みどろ絵の印象

猫が大好き過ぎる花魁・薄雲のお話

2020年8月17日、太田記念美術館のツイッターにて、月岡芳年の「古今比売鑑 薄雲」を「猫が大好き過ぎる花魁」と紹介したところ、予想を上回るリツイートやいいねがありました。 アクセサリーである簪の飾りが猫に。 着物の柄も猫。 着物の紋も猫。 Twitterでは「仕事の最中でも可愛がるので、妓楼の主人が見かねて猫を遠ざけると、病気になって寝込んでしまうほど。」と紹介しましたが、この薄雲という花魁、元禄時代に実在しました。薄雲と猫にまつわるエピソードも『近世江都著聞集』や

髭切と膝丸という刀剣が登場する浮世絵のお話

日本刀の「髭切」と「膝丸」。ゲーム「刀剣乱舞」でも人気キャラクターとなっていますが、その姿は浮世絵の中にも描かれていますので、ご紹介したいと思います。 ※今回紹介する作品は、現在、太田記念美術館では展示しておりません。 髭切(ひげきり)まずは、「髭切」。『平家物語』剣巻によれば、平安時代、源満仲が刀鍛冶に作らせた2本の刀が、髭切と膝丸でした。そのため、ゲーム「刀剣乱舞」の中では、兄弟という設定になっています。 髭切は、罪人の首を斬った際、髭もそのまま一緒に斬れたことから

源博雅と鬼の笛の話

月岡芳年の晩年の代表作、「月百姿」。その1図である「朱雀門の月 博雅三位」では、満月が輝く夜、2人の男性が向かい合って笛を吹く様子が描かれています。 こちらに背中を向けている男性は、平安時代に管絃の名手として知られた源博雅(918~980)。朱雀門の鬼と言葉を交わすことなく笛を吹き合い、互いの笛を交換したという逸話を題材にしています。 このエピソードは、夢枕獏氏の小説『陰陽師』飛天ノ巻「源博雅堀川橋にて妖しの女と出逢うこと」でも取り上げられていますが、その小説を漫画化した

平安時代の悲しい恋のお話ー月岡芳年の浮世絵より

明治時代の浮世絵師、月岡芳年が描いたこちらの作品。 船の上にいる女性が琵琶を抱えていますが、演奏はしていません。 顔をよく見ると、目頭を押さえて、流れる涙をとどめようとしているようです。 明治19年(1886)に制作された月岡芳年の「月百姿 はかなしや波の下にも入ぬへし つきの都の人や見るとて 有子」という浮世絵です。Twitterでも紹介しましたが、実は、せつなくも悲しい、恋の物語を描いているのです。 この浮世絵の典拠となるのは『源平盛衰記』第3巻。 平安時代後期

本能寺の変を月岡芳年も描いてみた。

本能寺の変は、天正10年(1582)6月2日、京都の本能寺に滞在していた織田信長に対し、家臣である明智光秀が謀反を起こした事件のこと。以前、別記事にて、歌川国芳による本能寺の変の浮世絵をご紹介しましたが、国芳の門人である月岡芳年も、本能寺の変を描いています。 月岡芳年が描いた本能寺の変が、こちらの「京都四条夜討ノ図」。元治元年(1864)の制作です。右端にいる織田信長が、敵兵に槍を突き付けられている場面を描いています。 実は江戸時代、浮世絵版画の中で、天正年間(1573~

江戸・明治時代の明智光秀はこんな顔をしていました

NHK大河ドラマ『麒麟がくる』の主人公になった明智光秀。江戸時代から明治時代にかけて刊行された浮世絵の中にも、明智光秀の姿はさまざまに描かれています。今回は、太田記念美術館のコレクションの中から、明智光秀が登場する浮世絵を探してみました。 まずは、歌川芳虎の「名将四天鑑 小多春永公」。元治元年(1864)作。江戸時代は、戦国武将たちの名前をそのまま表記することができませんでしたので、それに近い名前に変更されています。 織田信長(小多春永)と4名の重臣たちという、豪華メンバ

月岡芳年は明智光秀推しだった?というお話

NHK大河ドラマ「麒麟がくる」の主人公は明智光秀ですが、以前に月岡芳年の「月百姿」を調査していた際、明智光秀とその家臣たちを扱った作品が多いなと感じていました。もしかしたら芳年は明智光秀が好きだったのかも?ということで、「月百姿」の明智光秀と家臣たちについて調べてみました。 そもそも「月百姿」とは、月にまつわる日本や中国の歴史や物語を題材とした浮世絵版画。全100点からなる膨大なシリーズですが、その中に戦国武将が登場する作品は13点あります。武将たちの名前を挙げると、以下の

おいしいの視線の先は?―月岡芳年「風俗三十二相 むまさう 嘉永年間女郎之風俗」

満月の輝く夜、建物2階の縁側で女性がにこやかな表情をしている。右手に持つ串の先に刺さっているのは、天ぷらだ。しっぽがあるので魚であろう。メゴチかキスだろうか。 染付の大皿に天ぷらが盛られ、縦じま模様のそばちょこには、天つゆがなみなみと注がれている。 江戸時代の庶民たちに人気のグルメといえば、そば、すし、うなぎ、そして、天ぷらである。江戸の町でいう天ぷらとは、魚介類にうどん粉をまぶして、ごま油で揚げたもの。アナゴや芝エビ、コハダや貝柱などが好まれた。 天ぷらは油を使う

花魁たちは髪にかんざしをどこまで挿すことができるのか、数えてみた。

花魁といえば豪華絢爛なファッション。なかでも目を惹くのが、簪(かんざし)・笄(こうがい)・櫛(くし)といった髪飾りです。一般の女性たちであれば、控えめに数本挿す程度ですが、花魁たちはこれでもかというくらいド派手に盛り付けます。 それでは、花魁たちはどれくらいたくさんのヘア・アクセサリーを挿しているのでしょうか?6人の浮世絵師たちが描いた美人画の中から、華やかな花魁たちをピックアップしてみました。 トップバッターは喜多川歌麿の「五人美人愛敬競 松葉屋喜瀬川」。寛政7~8年(

【オンライン展覧会】「月岡芳年―血と妖艶」第1章 血

 太田記念美術館にて、2020年8月1日~10月4日に開催された「月岡芳年―血と妖艶」展のアーカイブです。展覧会は「血」「妖艶」「闇」の3章構成となっており、さらに前期と後期で全点展示替えをしておりましたが、このオンライン展覧会では、第1章「血」で展示した全46点の画像、ならびに全ての作品解説を掲載しています。  note上では、画像をクリックすると、より大きなサイズでご覧いただけますので、美術館で実物をご覧いただくような感じでお楽しみいただけます。 オンライン展覧会の入

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【オンライン展覧会】「月岡芳年―血と妖艶」第2章 妖艶

 太田記念美術館にて、2020年8月1日~10月4日に開催された「月岡芳年―血と妖艶」展のアーカイブです。展覧会は「血」「妖艶」「闇」の3章構成となっており、さらに前期と後期で全点展示替えをしておりましたが、このオンライン展覧会では、第2章「妖艶」で展示した全50点の画像、ならびに全ての作品解説を掲載しています。  note上では、画像をクリックすると、より大きなサイズでご覧いただけますので、美術館で実物をご覧いただくような感じでお楽しみいただけます。 オンライン展覧会の

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【オンライン展覧会】「月岡芳年―血と妖艶」第3章 闇

 太田記念美術館にて、2020年8月1日~10月4日に開催された「月岡芳年―血と妖艶」展のアーカイブです。展覧会は「血」「妖艶」「闇」の3章構成となっており、さらに前期と後期で全点展示替えをしておりましたが、このオンライン展覧会では、第3章「闇」で展示した全50点の画像、ならびに全ての作品解説を掲載しています。  note上では、画像をクリックすると、より大きなサイズでご覧いただけますので、美術館で実物をご覧いただくような感じでお楽しみいただけます。 オンライン展覧会の入

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「月岡芳年ー血と妖艶」展 スライド・トーク オンライン配信 まとめ

太田記念美術館にて、2020年8月1日~10月4日に開催中の「月岡芳年―血と妖艶」展。これまで、展覧会の見どころを学芸員が紹介するスライド・トークは大変ご好評をいただいておりましたが、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、実施することができない状況です。 そこで、スライド・トークをオンラインにて配信することにいたしました。10回分の放送を、視聴しやすいよう、noteにまとめてみました。紹介作品もリストアップしております。また、字幕もありますので、必要な方は、字幕をONにしてく