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動物 記事まとめ

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浮世絵に描かれた動物たちの記事をまとめました。
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#アート

浮世絵のカメたちをご紹介します

浮世絵にはさまざまな種類の動物たちが登場します。ネコやイヌといった身近な哺乳類はもちろんですが、両生類や爬虫類の姿も描かれています。以前、カエルの浮世絵を取り上げましたが、今回はカメの浮世絵をご紹介しましょう。 まずは、浮世絵に登場するカメとしてもっとも有名な作品が、歌川広重の「名所江戸百景 深川万年橋」でしょう。 胴体に細い紐が結び付けられ、宙にぶら下がっているカメ。首を上に伸ばし、手足をバタバタしているようです。 なぜカメがこんな姿で吊るされているのかと言えば、この

子ネコたちが寺子屋でお勉強している様子を紹介します

歌川芳虎の「新板ねこの手ならひ師匠」では、子ネコたちが寺子屋で読み書きを習っている様子が描かれています。今回は、そんな子ネコたちの奮闘ぶりをご紹介しましょう。中には真面目にお勉強できない子ネコたちもいるようですが…。 こちらの浮世絵、画面の上と下に二つの場面が描かれています。まずは、上の「席書」の場面から見てみましょう。 「席書」とは、大勢の前で子ネコたちに文字を書かせる、言わばお披露目の会です。画面の上には、「鶴亀」「松竹梅」など、大きな紙に書かれた書がずらりとぶら下が

太田記念美術館の謎のアイコン「虎子石」①これって何?生き物?

太田記念美術館の公式twitterアカウントや、noteアカウントに使われている謎のアイコン。 これは何なの?石?生き物?と思われる方が多いので、改めて紹介したいと思います。 実はこのアイコンは、歌川芳員「東海道五十三次内 大磯」(※現在展示しておりません)という作品に描かれた、謎のキャラクターを切り抜いたもの。大きな石に虎の手足と尻尾、目や口と思われるものもついており、おそらく生き物なのでしょう。 名前は「虎子石」とあります。 突然現れた虎子石に、周囲の人々がびっく

ネズミの絵暦いろいろ

旧暦では、一ヶ月が30日からなる大の月と、29日からなる小の月がありました。毎年変わる大小月を示した暦が「大小」であり、またこれを絵で示したものを近代以降では「絵暦」(大小絵暦)と呼びます。 新年に配られた絵暦では、鶴や亀、十二支などおめでたい動物もモチーフとして人気でした。今回は太田記念美術館が所蔵する絵暦のなかから、安永9年(1779)、庚子の、ネズミが大活躍する絵暦をご紹介いたします。 「鼠の相撲」 12.6×13.1cm ネズミの力士が睨み合っています。行司は大

ネズミVS人間のいさかいをリポートしてみた

今回ご紹介するのは、ネズミと人との小競り合いを描いた四代歌川国政「しん板ねづミのたわむれ」(明治15年[1882]大判錦絵)。では早速、見ていきましょう。 一段目  夜、ネズミの暗躍と翻弄される人々 まずは一段目。夜中に突然ネズミが現れたのでしょう、寝間着姿の夫婦と子供が大騒ぎをしています。 勇ましく応戦する男性。右手に枕、左手にほうきを手にしています。右足で踏みつけるのはネズミ捕りの仕掛け、「枡おとし」に使った一升枡。棒で支えて立て掛けた一升枡の下に餌を置き、これにネ

浮世絵の象たちをご紹介いたします

現代人にとって、動物園やテレビで見慣れた動物である象。浮世絵にもしばしば登場するのですが、本来、象は日本には生息しない動物です。今回は江戸から明治にかけて象を描いた浮世絵をご紹介しながら、当時の人々にとって未知の動物である象が、どのような存在であったかも見ていきたいと思います。 北尾重政「江口の君図」寛政1~10年(1789~98)頃 絹本着色 一幅 白い象に乗るのは、謡曲『江口』で知られる遊女。『江口』は、西行法師が摂津国の江口で遊女と歌問答を行ったことや、遊女が普賢菩

浮世絵のなかに夢中で遊ぶ猫を探してみた

浮世絵には、江戸時代の人々に家族の一員として愛された猫たちが数多く登場します。そこで今回は、夢中で遊ぶ飼い猫たちの姿を中心にご紹介いたします。 月岡雪鼎「髪すき」天明6年(1786) 絹本着色一幅 季節は冬。こたつに入った女性が髪を結ってもらいながら手紙を読んでいます。そしてその手紙の端では・・・ ヒラヒラ揺れるのが面白いのでしょう。赤い紐が結ばれた飼い猫が、手紙の揺れに合わせて踊るようにじゃれついています。ちなみに本図は肉筆画。柔らかな筆使いで猫のフワフワとした体毛が

#キュレーターバトル #ヘンな生きもの をまとめました。

NHKびじゅつ委員長 @nhk_bijutsu のツイッターが繰り出す“お題”に、全国の美術館・博物館のキュレーターたちが、「秘蔵の逸品」「謎めいた珍品」で戦いを挑む、「#キュレーターバトル」という企画が始まりました。 第1回のお題は「#ヘンないきもの」。2021年12月20日に最初のツイートをして以来、日本全国の博物館・美術館にご参加いただいておりますが、ハッシュタグをさかのぼるのは大変かと思います。 そこで、参加館ごとにツイートをまとめてみました(投稿順です)。太田記

町で働く猫たちをご紹介します

歌川芳藤の「しん板猫のあきんどづくし」では、猫たちが、人間さながらの姿になって、町でさまざまな商品を売り歩く仕事をしています。今回は、一生懸命働く猫たちの様子を詳しくご紹介しましょう。左上から順番に見ていきます。 ①読売 2匹とも、ちょっと変わった形の笠を頭に被っていますが、八つ折編笠というものです。いろは歌や流行の童謡の本を、読み唄いながら売り歩く読売という商売です。「これまでが上の文句。さよふ、さよふ」「これからが面白い。さあ一ツ読みまう」と、2匹で仲良く相談していま

江戸時代のイヌが雪の中を駆けまわっているのか、確かめてみた。

童謡「雪」では、雪が降ると「♬犬は喜び、庭駆けまわり~、猫はこたつで丸くなる~」というフレーズがあります。以前の記事では、こたつで丸くなっている江戸時代のネコたちを紹介しました。 それでは、江戸時代の犬たちは雪が降ると喜んで庭を駆け回るのでしょうか?今回は、歌川広重が描いた浮世絵の中から、雪の中の犬たちの様子をご紹介します。 まずは「名所江戸八景 浅草の暮雪」という作品です。雪が降り積もる中、傘をさしながら隅田川のほとりを歩く3人の女性たち。背景には吾妻橋や浅草寺が見えま

2022年の干支・寅にちなんで、虎の浮世絵を紹介します。

2022年の干支は寅。それにちなんで、浮世絵に描かれた虎たちをご紹介しましょう。 まずは、葛飾北斎が数え90歳、亡くなる数か月前に描いた肉筆画「雨中の虎」です。雨が降る中、虎が上空を睨みつけて、雄たけびをあげています。 もともとこの「雨中の虎」は「龍図」(ギメ東洋美術館蔵)と双福になるよう制作されました。虎の視線の先には龍がいて、虎は龍に向かって雄たけびをあげているのです。 虎のプロポーションをよく見てみると、首や尾っぽが異様に長かったり、足もかなり大きかったりしていて

江戸時代のネコもこたつで丸くなるようです。

寒い季節になると、こたつが恋しくなってきます。童謡「雪」には「猫はこたつで丸くなる」というフレーズがありますが、江戸時代のネコたちはどうだったのでしょうか。今回は、こたつで丸くなっているネコたちの浮世絵をご紹介しましょう。 こちらは鈴木春信の「水仙花」。2人の男女がこたつに入っています。左の青年が、読書をしているふりをしながら、右の娘に足でちょっかいを出したようです。娘は、ちょっと腹が立ったのか、お返しにとばかり、男性の足をくすぐっています。 そんな2人の痴話喧嘩にはまっ

浮世絵のカエルたちをご紹介します

カエルが好きな絵師と言えば、自分のお墓にカエルの形の石を選んだ河鍋暁斎。 暁斎の絵本には、リアルなカエルから、人間さながらの動きをするカエルまで、さまざまなカエルたちが登場します。 では、他の絵師たちはどのようにカエルを描いているのでしょうか。今回は、浮世絵に描かれたカエルたちをご紹介しましょう。 まずは河鍋暁斎以上に、数多くの絵本を制作した葛飾北斎。その代表作である『北斎漫画』の初編には、2匹のカエルが登場します。1枚目はトノサマガエル、2枚目はアメフクラガエルでしょ

河鍋暁斎がカエル好きだったという話

河鍋暁斎の肉筆画や版画には、さまざまなカエルたちが登場します。絵本というジャンルに目を向けてみても、こちらのように本物そっくりのリアルなカエルから、 こちらのような、人間さながらのユーモラスな動きをするカエルまで。 いずれもカエルの特徴をしっかりと捉えているだけでなく、暁斎のカエルに対する愛着が感じられます。今回は、暁斎がカエル好きだったというエピソードについてご紹介します。 そもそも暁斎がカエルを好きだったのは、幼い頃からのようです。 『暁斎画談 外篇』上巻の冒頭に