マガジンのカバー画像

動物 記事まとめ

32
浮世絵に描かれた動物たちの記事をまとめました。
運営しているクリエイター

#日本美術

浮世絵のカメたちをご紹介します

浮世絵にはさまざまな種類の動物たちが登場します。ネコやイヌといった身近な哺乳類はもちろんですが、両生類や爬虫類の姿も描かれています。以前、カエルの浮世絵を取り上げましたが、今回はカメの浮世絵をご紹介しましょう。 まずは、浮世絵に登場するカメとしてもっとも有名な作品が、歌川広重の「名所江戸百景 深川万年橋」でしょう。 胴体に細い紐が結び付けられ、宙にぶら下がっているカメ。首を上に伸ばし、手足をバタバタしているようです。 なぜカメがこんな姿で吊るされているのかと言えば、この

子ネコたちが寺子屋でお勉強している様子を紹介します

歌川芳虎の「新板ねこの手ならひ師匠」では、子ネコたちが寺子屋で読み書きを習っている様子が描かれています。今回は、そんな子ネコたちの奮闘ぶりをご紹介しましょう。中には真面目にお勉強できない子ネコたちもいるようですが…。 こちらの浮世絵、画面の上と下に二つの場面が描かれています。まずは、上の「席書」の場面から見てみましょう。 「席書」とは、大勢の前で子ネコたちに文字を書かせる、言わばお披露目の会です。画面の上には、「鶴亀」「松竹梅」など、大きな紙に書かれた書がずらりとぶら下が

太田記念美術館の謎のアイコン「虎子石」①これって何?生き物?

太田記念美術館の公式twitterアカウントや、noteアカウントに使われている謎のアイコン。 これは何なの?石?生き物?と思われる方が多いので、改めて紹介したいと思います。 実はこのアイコンは、歌川芳員「東海道五十三次内 大磯」(※現在展示しておりません)という作品に描かれた、謎のキャラクターを切り抜いたもの。大きな石に虎の手足と尻尾、目や口と思われるものもついており、おそらく生き物なのでしょう。 名前は「虎子石」とあります。 突然現れた虎子石に、周囲の人々がびっく

ネズミの絵暦いろいろ

旧暦では、一ヶ月が30日からなる大の月と、29日からなる小の月がありました。毎年変わる大小月を示した暦が「大小」であり、またこれを絵で示したものを近代以降では「絵暦」(大小絵暦)と呼びます。 新年に配られた絵暦では、鶴や亀、十二支などおめでたい動物もモチーフとして人気でした。今回は太田記念美術館が所蔵する絵暦のなかから、安永9年(1779)、庚子の、ネズミが大活躍する絵暦をご紹介いたします。 「鼠の相撲」 12.6×13.1cm ネズミの力士が睨み合っています。行司は大

浮世絵の象たちをご紹介いたします

現代人にとって、動物園やテレビで見慣れた動物である象。浮世絵にもしばしば登場するのですが、本来、象は日本には生息しない動物です。今回は江戸から明治にかけて象を描いた浮世絵をご紹介しながら、当時の人々にとって未知の動物である象が、どのような存在であったかも見ていきたいと思います。 北尾重政「江口の君図」寛政1~10年(1789~98)頃 絹本着色 一幅 白い象に乗るのは、謡曲『江口』で知られる遊女。『江口』は、西行法師が摂津国の江口で遊女と歌問答を行ったことや、遊女が普賢菩

浮世絵のなかに夢中で遊ぶ猫を探してみた

浮世絵には、江戸時代の人々に家族の一員として愛された猫たちが数多く登場します。そこで今回は、夢中で遊ぶ飼い猫たちの姿を中心にご紹介いたします。 月岡雪鼎「髪すき」天明6年(1786) 絹本着色一幅 季節は冬。こたつに入った女性が髪を結ってもらいながら手紙を読んでいます。そしてその手紙の端では・・・ ヒラヒラ揺れるのが面白いのでしょう。赤い紐が結ばれた飼い猫が、手紙の揺れに合わせて踊るようにじゃれついています。ちなみに本図は肉筆画。柔らかな筆使いで猫のフワフワとした体毛が

江戸時代のイヌが雪の中を駆けまわっているのか、確かめてみた。

童謡「雪」では、雪が降ると「♬犬は喜び、庭駆けまわり~、猫はこたつで丸くなる~」というフレーズがあります。以前の記事では、こたつで丸くなっている江戸時代のネコたちを紹介しました。 それでは、江戸時代の犬たちは雪が降ると喜んで庭を駆け回るのでしょうか?今回は、歌川広重が描いた浮世絵の中から、雪の中の犬たちの様子をご紹介します。 まずは「名所江戸八景 浅草の暮雪」という作品です。雪が降り積もる中、傘をさしながら隅田川のほとりを歩く3人の女性たち。背景には吾妻橋や浅草寺が見えま

歌川国芳が描いた「九尾の狐」の物語

「九尾の狐」あるいは「玉藻の前」という妖怪を、漫画やアニメ、ゲームのキャラクターとして知ったという方も多いのではないでしょうか。 「白面金毛九尾の狐」という妖怪は、絶世の美女に姿を変え、さまざまな国の為政者たちをたぶらかしたことで知られており、その悪行は、中世や近世のさまざまな物語の中で語られています。特に、江戸時代後期には、岡田玉山作・画『絵本玉藻譚』や高井蘭山作・蹄斎北馬画『絵本三国妖婦伝』といった読本(よみほん)が広く読まれました。 歌川国芳は、『絵本玉藻譚』を参考

アニマルデザインの扇 5選

あまり知られていないかもしれませんが、太田記念美術館のコレクションには900本以上の扇が含まれてます。かつては大阪の豪商、鴻池家にあったもので鴻池家と太田家が姻戚関係にあったことから縁があり、太田記念美術館の開館に際して所蔵品となりました。多くは江戸時代後期の多様なジャンルの絵師たちの作品で、すべて版画ではなく絵師が直接絵筆をふるった肉筆画。そのため小画面ながら、それぞれの個性が発揮された多彩な筆使いを楽しむことができます。動物を描いたものも多く、今回はよりすぐりの5点をご紹

【オンライン展覧会】浮世絵動物園ー歌川広重「名所江戸百景」

歌川広重が最晩年に描いた「名所江戸百景」。その中から動物を描いた作品8点を選び、他の作品も交えながら、詳しくご紹介いたします。 【購入にあたってのご注意】 ・この記事は有料記事です。1点まで無料で公開していますが、8点全てをご覧いただくためには、無料公開の下にある「記事を購入する」をクリックしてご購入ください。 ・料金は200円です。 ・無期限でご覧いただけます。 ①猫 「浅草田甫酉の町詣」 格子窓のそばにちょこんと座っている可愛らしい白猫。両耳を立てて、外の景色をじっ

有料
200

化かす浮世絵・だます浮世絵

昔話では、キツネやタヌキに化かされて散々な目にあったという話がありますが、浮世絵でも、キツネやタヌキに化かされている場面がしばしば描かれます。さらに、人間が動物をだましたり、動物が動物をだましたりといった、ちょっと変わった浮世絵もあるのです。今回は、そんなユーモラスな浮世絵4点をご紹介します。 ①月岡芳年「東京開化狂画名所 墨堤三囲社 野狐の愉快」 隅田川のほとりにある三囲神社。桜が満開ですので、男性は花見にやってきて、さんざんお酒を飲んで酔っ払ったのでしょう。すっかり日

年末の大掃除で動物たちも大忙しです。

年の暮れ、大掃除に追われているご家庭も多いかと思いますが、実は、人間の世界だけでなく、動物の世界も大掃除で大忙しです。こちらは、歌川国芳の門人である歌川芳艶が描いた「獣すすはきのず」。いろいろな動物たちが協力しながら、みんなで大掃除をしています。 「煤掃き(すすはき)」あるいは「煤払い(すすはらい)」とは、新年を迎える準備として、家の中に溜まったすすやほこりを払う行事のこと。江戸時代では12月下旬ではなく、12月13日に行なうのが恒例でした。 それでは動物たちがどのように

2021年の干支・丑にちなんで、牛の浮世絵を紹介します。

もうすぐ2021年。干支は丑です。そこで、浮世絵に描かれた牛たちをご紹介しましょう。 まずは二代歌川広重の「東都三十六景 高輪海岸」です。場所は、現在の東京都港区高輪。JR山手線の高輪ゲートウェイ駅近くです。まだ埋め立てが行われていなかったため、目の前には江戸湾が広がっていました。外国船や台場も見えます。 高輪にはたくさんの牛がおり、高輪牛町と通称される場所もありました。19世紀前半に刊行された『江戸名所図会』には、なんと1000頭以上の牛がいたと記されています。この浮世

浮世絵のキツネたちをご紹介します

先日のTwitterにて、明治の浮世絵師・月岡芳年が「月百姿」というシリーズの中で描いた、キツネの作品を2点、紹介しました。 大変に好評だったため、キツネ好きの方は世の中にかなり多いのでは!?、と思い、早速、他のキツネの浮世絵も紹介してみることにしました。 こちらは歌川広景の「江戸名所道戯尽 十六 王子狐火」。 二足歩行をするキツネたちが列をなしていますが、よく見ると、そこに人間が一人だけ、まぎれています。大きなザルの中にどっかりと座り、腕組みをして、ご満悦の様子です。